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シネマの女は最後に微笑む

(c)Manolo Pavon

東日本大震災から10年経った。被災者にとっては、どれだけ長い10年だっただろうか。

先日テレビニュースに、震災で幼い息子を失った夫婦が登場していた。現在の2人には、震災後に生まれた娘が1人いる。娘を膝に乗せながら、「ふとした拍子に、あの子にそっくりだと思うことがある」と語る妻。思わず「△△だよね」と亡き息子の名を口にする母に、娘は「違うよ、○○だよ」と無邪気に返す。

この夫婦に笑顔が戻ってくるまでに、どれくらいの年月が必要だっただろう。生まれた娘が亡くなった息子に似てきた時、どんな気持ちになったのだろう。娘さんは成長して、自分に重ねられる亡き兄のことをどう思うのだろう。

部外者がやすやすと想像して語ることはできないが、さまざまなことを考えさせられた。

今回紹介する『おもかげ』(ロドリゴ・ソロゴイェン監督、2019)は、幼い息子を失った女性の「10年後」を描いたスペイン・フランス合作映画である。

16歳の少年に失った息子の面影を

冒頭の15分は、世界各国の映画祭で50以上の賞を獲得した2017年の短編映画『Madre』(2017)がそのまま使われている。

スペインのマドリードで独身生活を謳歌していたエレナ(マルタ・ニエト)のもとに、別れた夫ラモンとフランスを旅行中の6歳の息子イバンから、「パパがいない」という電話がかかってくる。忘れ物を車まで取りに行った父が戻らず、誰もいない冬のビーチに1人で残されているらしい。

徐々に状況の深刻さが伝わってくる中で、必死でイバンとやりとりを続けようとするエレナ、イバンに迫る危険……。

このただならぬ緊迫感に満ちた長いワンカットの後、ドラマは10年後に飛び、広い砂浜を1人で歩くエレナが登場する。


(c)Manolo Pavon

文=大野 左紀子

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