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ジョー・バイデン大統領(Photo by Alex Wong/Getty Images)

昨年、世界はかつて想像もしなかったような変化にいくつも見舞われた。英国の経済学者、ジョン・メイナード・ケインズの理論が再び尊敬を集めるようになったことも、その一つに含めていいだろう。

いまでは、各国の政権関係者で、財政赤字支出が国内総生産(GDP)を押し上げるということに異論を唱える人はほぼいない。意見が違う点があるとすれば、その効果の大きさや期間についてだけだろう。

折しも米国では、すでに過去最悪の水準にある財政赤字が、ジョー・バイデン大統領が提案した1.9兆ドル(約200兆円)の新型コロナウイルス追加経済対策によって、さらに膨れ上がろうとしている。

対策法案は10日、議会下院で可決され、12日にバイデンの署名によって成立する。米国の新型コロナ対策ではこれに先だち数兆ドルが投じられ、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)前の時点で2兆ドル近くに達していた財政赤字が急増した。

過剰な財政出動だろうか。答えは今後の状況次第だろう。接種が進められているワクチンが新たな変異株などにも効果を発揮し、年内の経済活動正常化につながれば、支出額は過剰だったということになるかもしれない。

だが、パンデミックが夏以降も続き、雇用が回復せず、中小企業の倒産もさらに続くようであれば、この規模の対策は必要だった、あるいは不十分だったということになるだろう。

この点に関しては、筆者の信頼する専門家の間でも見方が分かれている。今後どうなるかは誰にもわからないが、この議論は理論的に重要なものだ。

そこでの問題点をじつによく浮き彫りにしたのが、MMT(現代貨幣理論)の主唱者、ステファニー・ケルトンのコメントだ。彼女はバイデンの追加対策がインフレをもたらすことを懸念しているかと問われ、こう答えている。

「1.9兆ドルの対策案には需要インフレを引き起こすリスクがあると考えているか、ということでしたら、そう考えていません、というのが答えです。ただ、話題の中心になっているのがインフレリスクで、財源の枯渇でないのは確かです。議論の条件が変わったのです」

これこそまさに、わたしたちが懸念すべき点である。ごく一握りの古典派経済学者を除けば、債務の増大を誰も恐れなくなっているのだ。

これに関しては議論が終わったかのように思われているが、実際は議論が行われていないというのが正しいところだろう。

編集=江戸伸禎

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