ファンからのチャットによるコメントに、アーティストがリアルタイムで呼びかけるなど、コロナ禍での新しい音楽の楽しみ方を主催しているのが、有料会員限定のコミュニティ型ファンクラブアプリ「Fanicon(ファニコン)」だ。アーティストとのチャットやファン同士のグループチャット、グッズ販売などのオンライン機能があり、かつ無料ユーザーがいないことでコミュニティの熱量が高められるメリットがあり、現在2000組超のコミュニティが運営されている。
同サービスを行っているのは、代表取締役CEO・平良真人が14年1月に創業したTHECOO(ザクー)だ。20年3月には、有料チケット制ライブ配信サービス「Fanistream(ファニストリーム)」の運営も開始。同7月には、7億円の資金調達を発表し、コロナ禍で運営コミュニティ数、ユーザー数ともに倍増するなか、さらなる成長へのかじ取りを行う。
そのTHECOOに18年4月から投資をしているのが、大久保洸平がインベストメントマネジャーを務めるYJキャピタル。なぜ、大久保は、平良率いるTHECOOに投資をしたのか。
大久保:最初にお会いしたのは、18年1月。(YJキャピタルに参画してから)はじめての出資先で思い入れがあるのですが、投資した理由は平良さんが「何かやってくれそう」という起業家だったから。会社のビジョンとして「『できっこない』に挑み続ける」を掲げていることからわかるように平良さんがすごくポジティブ思考で、かつ、上下、社内外分け隔てなく、多くの人たちから慕われている。もちろん、伊藤忠商事、ソニー、米グーグル出身で、事業をかたちにしていたという理由もあります。
ただ、印象的だったのが「運と勘もすごい」という社内の方のコメントです。慕われ信頼され、人を巻き込む力があり運も引き寄せてこそ、できっこないことができるのではないか、と。
平良:当時は「Fanicon」が立ち上がったばかりの時期で、数多くのVCを回りました。なかでも、大久保さんは僕らの事業にとても興味をもってくれた。僕らにとって、一緒にやるパートナーが事業を面白いと思ってくれることが、バリュエーションよりも大事なことでしたから、出資していただいた。
また、大久保さんは、人生初のライブが、(「Fanistream」で配信された女性アイドルグループの)アップアップガールズ(仮)だったりするくらい、音楽やエンタメに疎い。ビジネスとして面白いと信じてくれているからこそ、いつも「過小評価されています」「もっとすごく見せられる」と思ってくれて正当に評価されるためのロジックを整理してくれる。とてもありがたいです。