「デジタル遺品」に潜むワナ 圧倒的に多いトラブルは?

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暗号資産の最悪のケースとは


多くの読者諸氏にとって気になるトピックのひとつであろう、「暗号資産」についてはどうか。国内の暗号資産取引所に保管している場合は、遺族がその取引所に相談すれば所定の手続きを経たうえで残高を日本円に換金して戻してくれる。

厄介なのは、個人で管理している場合だ。遺族にパスワード(秘密鍵)が伝わっていないと、残された暗号資産には二度と触れられなくなる。無用の長物になるが、何らかの取り引き履歴から所有していることだけは判明した場合、相続対象として計上される可能性が高いという。額によっては相続税もかかってしまう。

見られたくないデジタルデータをどう「隠す」か


現代では多くの人が、他人に知られたくないものの1つや2つは、デジタル環境においても抱えているのではないだろうか。

そこで、故人となった家族の遺産を「復旧する」のとは逆に、生きているうちに、自分のデジタルな資産や情報を「隠す」方法についても古田氏に聞いてみた。

「自分の死後、残された人たちが探し求めるであろうものは、なるべくわかりやすいところに置いておくことです。たとえばパソコンであれば、デスクトップにショートカットアイコンを作成するなど。

アナログ環境では、たとえば思い出のアルバムは、表紙にきちんと名前を書いてわかりやすい場所に置き、反対にあまり発見されたくないものは見つかりづらい場所にしまう。こうしたことを多くの人がごく自然に行っていると思います。しかし、デジタル環境になると、なぜかこうした棲み分けを怠る人が多い。アナログ・デジタル関係なく、気付いてほしいものとそうでないものの棲み分けをすることは、非常に重要です」

残された人たちに、「あなたが欲しているものはこれです」とわかりやすい場所に提示する。非常にシンプルではあるが、そうすることで余計な詮索をされずに済み、結果的に最大の防御になるのだと古田氏は話す。
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取材・文=長谷川 寧々 編集=石井 節子

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