露呈する日本の研究体制への問題点。3つの大切な視点とは

以下の言葉のいくつをご存知だろうか。

JST、CSTI、AMED、SIP、PRISM、WPI、OPERA。

いずれも日本の研究開発に関わる重要な機関や会議、プロジェクト名である。ちなみに、一番ポピュラーなJSTは、国立研究開発法人科学技術振興機構の略称だ。

日本の科学技術政策は、広範多岐にわたっている。主管官庁は文部科学省や経済産業省だけではないし、官庁横断的なプロジェクトや総理大臣直轄の検討の場も少なくない。最近では、ムーンショット目標という、かなり「ぶっ飛んだ」発想を求めるプロジェクトが話題になっている。

しかし、それでも、海外主要国と比べると、非常に「ヤバい」状況にある。最近5年間の研究開発費の伸び率は約3%。この間、米国は約19%、EUが約21%、中国にいたっては約48%に達している。その結果、OECDによると、年間の研究開発費は日本の18兆円弱に対して、米国は56兆円、中国は51兆円と約3倍だ。

研究者数も心もとない。日本が過去20年間、70万人弱で低回するのを尻目に、中国は急増し180万人、米国も堅調に伸ばして140万人程度である。

日本の研究体制の問題点を露呈している分野が新型コロナウイルスである。関連論文数は、トップが米国、2位が中国、以下、イタリア、英国、インドと続き、日本ははるか下の16位だ。イランやトルコより少ない。

先端技術は一日にしてなるものではない。明治維新後の日本の経験が参考になる。自力で世界最高水準の戦艦大和をつくり上げる40年前、日本海海戦時の旗艦三笠は英国製だった。零戦が世に出たのが1940年だが、日本軍が航空機の優位性に注目したのは第1次大戦だったから、これまた航空機技術を自家薬籠中のものにするのに30年かかっている。

先端技術は海外からの導入、模倣だけでよいわけがない。自力で追いつき、さらに追い越していかなければならない。一たび大きな後れを取ると、挽回するために長い時間と資金、手間がかかる。だから、常時海外の最先端情報に接し、いささかでも後れを取っているようであれば、速やかに追いつく必要がある。そのためには、層が厚く広がりのある研究者集団を、不断に育成していくことが不可欠になる。
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文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN No.078 2021年2月号(2020/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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