後発でも勝てるサービスになるための5つのポイント
では、上記のようなサービスが、後発なのになぜ市場を獲得することができたのだろうか?おそらくそこにはいくつかの重要なポイントがある。それらをサービスデザイン的な観点から考察してみる。
●「何をやるか」よりも「どうやるか」
● 似たようなサービスでもユーザー体験が大きな差別化要因となる
● すでに存在しているからといって諦めない
● ヒットさせるポイントはコアユーザーを喚起できるかどうか
● 市場とのタイミングが合うかどうかもかなり重要
1. 「何をやるか」よりも「どうやるか」
まず、今回のClubhouseのヒットを目の当たりにして、真っ先に感じたのが「何をやるかよりもどうやるか」の重要性。よく、まだ誰もやってないような革新的なサービスを作ろうとしてしまいがちだが、もしかしたら誰も必要としていないサービスになる可能性もある。それよりも、すでに似たようなサービスが存在していたとしても、その「やり方」を工夫することで、例え後発だったとしても勝機は残されている。ゼロサムになりがちなSNSサービスの世界でも、Facebookはやり方を工夫したことで、先発のサービスを凌駕することができたのが良い例。
2. 似たようなサービスでもユーザー体験が大きな差別化要因となる
では、どのようなやり方をすれば良いのだろうか? 実は、ユーザー体験が鍵を握っている。機能的にはほとんど変わらないようなサービスでも、使いやすいものとそうでないものがある。それを左右するのは、UXのクオリティー。特にデジタル系のサービスにおいては、どのようにUXデザインを行うかによって、その価値が決定づけられる。体験が良ければ、後発であってもユーザーを獲得することは不可能ではない。Gmailが良い例だろう。それまでのHotmailのスパムや広告だらけで使いにくかった点に着目し、使いやすさの改善を追求した結果、世界一のメールサービスに成長した。
3. すでに存在しているからといって諦めない
スタートアップのピッチイベントなどでは、審査員からよく「そのサービスすでに存在してるよね?」といった質問がされる。実際、自分もした事が何度かある。でも、すでに存在している = 試す価値がない、ということでは無い。これは、Zoomの成功がわかりやすい。それまでも多くの無料ビデオツールが存在していたが、より映像・音声のクオリティーを高め、安定させ、ターゲットをビジネス利用に絞り込んだことで、企業ユーザーを多く獲得し、大きな利益を生み出すことに成功した。
4. ヒットさせるポイントはコアユーザーを喚起できるかどうか
同じサービスでもユーザーが熱狂しているケースと、見向きもされていないケースがある。その違いは何なのだろうか?ヒットするサービスの場合は、ターゲットになるユーザーをしっかりと定め、彼らを上手に喚起していると思われる。例えば、Slackは初期のターゲットユーザーをエンジニアに絞り、画面内に直接コードを打ち込めるなど、エンジニアが最も使いやすいと感じる体験を優先して実装していった。そこから徐々に一般ユーザーにも広がっていった。そこには、UCDの概念をしっかりと踏まえたサービスデザインがされている。
5. 市場とのタイミングが合うかどうかもかなり重要
Bill GrossによるTED Talk「The single biggest reason why start-ups succeed」でも語られているとおり、スタートアップの成功を左右する一番の要因がタイミング。言い換えると、市場ニーズに提供されるサービスが合っているか。早すぎても遅すぎてもチャンスを逃す結果となる。この良い例が、Webvanの失敗だろう。90年代後半のネットユーザーはまだまだマニアックな利用方法をしていたし、スマホも存在していなかった。そんな時代に、ネットでの生鮮食品のデリバリーサービスは、明らかに早すぎた。でも、アイディア自体が間違ってたわけではない、時代に合っていなかっただけなのだ。
まとめ|本気でやりたいなら類似サービスが存在していても諦めるな
今から150年以上前、サンフランシスコの近郊で金が発見された。それを狙って世界中から一攫千金を目指して多くの人たちがやってきた。金脈に当たる人もいれば、外れてとぼとぼと帰って行く人もいた。
何が運命を分けたのだろうか? 実は諦めた人が掘った穴を違う人数メートル掘ったところで金が出てきたという話も少なくない。
さまざまなサービスが存在する今の時代、どこにも存在していないサービスを考えるのは至難の技だろう。
シリコンバレーなどでは、後発のサービスをリリースする際には、既存のサービスの「10倍」価値のあるサービスである必要がある、とされる。しかし、何をもって10倍とされるかがいまいちピンとこない。その要素分解が上記の5つのポイントとなる。
実は、American Marketing Associationによる調査によると、先発のサービスの失敗率は47%で、後発の場合はそれが8%にも下がる。これは、必ずしも最初に動いたもん勝ちじゃないし、すでにあるからといって諦める必要もないということでもある。
もし現在考えている、もしくは作っているサービスに「今さら感」があったとしても、本気でやりたいなら諦めるのはまだ早いかもしれない。
※この記事は、btraxのブログFreshtraxから転載・編集されたものです。
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