ビジネス

2021.04.13 15:30

日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由


4. リソースが分散される


日本国内だけでサービス展開をしていると、獲得できるユーザー数に限界がある。それもそのはずで、世界で日本語を話すユーザーは2%以下なのだから。(参考:どんなに頑張ってもお前がカバー出来るのは世界の2% )

そうなってくると、企業のスケールが大きくなればなるほど、複数のサービス展開が余儀なくされ、人的リソースも、投資も分散されてしまう。その結果、1つ1つのサービスのクオリティーや更新頻度が下がってしまい、グローバルにおける競争力を欠く結果となる。

日本で上場している上位のIT企業のその多くが複数のサービスをどんどんリリースして、運営している理由がこれ。例えば、リクルート、GMO、楽天、サイバーエージェントといった企業は、全て複数のサービス展開を行なっている。

これが、最初からグローバル展開している企業のサービスともなれば、1つのサービスにリソースをぶっこむ事ができる為、とてつもない頻度でプロダクト改善を進め、よりユーザーに喜ばれるプロダクトが生み出されるのだ。

TwitterはTwitterを、AirbnbはAirbnbを、DropboxはDropboxを、PinterestはPinterestを、SlackはSlackだけを追求することで、それぞれのサービスがの品質が高くなる結果に結びついている。

個人的にはこれが一番日本企業がグローバル展開するべき理由だと感じている。(参考: 日本の企業が海外進出するべき3つの理由)

5. 起業家のモチベーション源泉


最後に意外と見落としがちなポイント。そもそも起業家や経営者が何を達成したいか、そのモチベーションはどこにあるかという点。普段サンフランシスコやシリコンバレーで生活していると、本気で世界を変えたい起業家と接することが多い。

もちろん、日本でもそのような大きな志でビジネスをしている人もいるが、やはり現実的に考えると、まずは上場、そして利益の拡大などの”目先の結果”をメインの目的になりがちである。

これは「日本でイノベーションが生まれにくいと思った3つのポイント」でも説明している、起業家が評価されるポイントがどうしても、会社の規模や年商、資本金、利益率、時価総額などのいわゆる”ビジネス”的な点にフォーカスされる事が多いからだ。

では、上場したり儲かったりし始めた起業家はどうなるのか? 東京のIT企業を中心に、成功者は六本木や麻布で豪遊することが文化となっているようだ。もちろん成功者は、女性にもちやほやされるし、無理に世界を変えなくても、とってもエキサイティングな日々を送ることができる。明らかに彼らを取り巻く世界を変えることには成功している。

まだ上場や大きな利益を生み出していない状態だったとしても、カンファレンスで目立つことや、メディアに露出することで、周りからの注目を集め、精神的な満足感を得てしまう。そして、いつのまにか、それ自体が目標になるケースもある。(参考: モテない起業家は成功しにくいと思わせる7つの理由)

これが例えば、シリコンバレー地域だと、そもそも派手に遊ぶ環境がない。上場しても近づいてきてくれる港区女子もいないし、お金の使い道も、より会社を成長させる為にフォーカスするのが一般的だ。

その結果、ノイズが少ない環境で日々世界を変えることをよりピュアに追求しやすい。

まとめ: スタートアップを取り巻く環境の差


このように、東京とシリコンバレーではスタートアップや起業家を取り巻く環境、そして成功の定義が大きく異なる。

日本の場合は、最初は世界に挑む高い志を持っていたとしても、周りの環境に飲み込まれてしまい、いつの間にか「上場できたし、お金も稼いだし、可愛い女の子とも遊べるし、心地良いし、無理にグローバルに展開しなくても良いっかなー?」っていう気になってしまう危険性がある。

その点、アメリカ西海岸では、青空の下の健全な環境で、ピュアにユーザーの課題を解決するプロダクト作りに没頭することができる。そもそも夜遊び自体が本当に皆無に近い。起業家にとってのノイズが極端に少ないと言っても良いだろう。

環境が習慣を作り、習慣が行動を促し、行動が結果を生み出す。

現在の日本の起業家やベンチャー企業を取り巻く環境自体が、実はグローバルなプロダクトを生み出すことを妨げているのではないかと感じてしまう。

※この記事は、btraxのブログFreshtraxから転載・編集されたものです。
※過去の配信はこちらから。

文=Brandon K. Hill(CEO of btrax inc.)

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