ビジネス

2021.04.13

日本からグローバルなプロダクトが生まれにくい5つの理由

日米では、「成功の定義」がそもそも違う。/Photo by Shutterstock.com


2. 営業オリエンテッドな顧客獲得方法


新規のサービスを展開する際にはどのような方法で顧客を獲得するだろうか? おそらく、最初のうちは頑張って営業で稼ぐことを考えるだろう。これが、既存の顧客を多く抱えている企業の強みであり、リクルートや楽天、サイバーエージェントなどの企業の競争優位性を生み出している。

それ以外でも、営業代行会社を利用したり、路上でティッシュ配りをしたりして、どうにかユーザー数を増やしたりするケースもある。

しかし、アメリカの場合、このような体育会系な営業はかなり難しい。そもそも国土が広すぎて”営業を走らせる”のは無理なのである。

日米の国土の広さの差
アメリカのスタートアップは「営業をしない」

したがって、ほとんどのスタートアップは営業をしないし、営業職も日本ほど一般的ではない。ちなみに「シリコンバレーに来るならスーツは着ない事」でも語られている、シリコンバレーでスーツを着ている人をほとんど見ないの理由も同じ。

では、どのようにユーザーを集めるのか?プロダクトのクオリティーを出来るだけ高くし、口コミやデジタルマーケティングを通じて、急成長を達成する。そして、かなりの短いスパンでプロダクトの改善を行い続ける。

地道な営業が難しい分、ユーザーが本当に欲しいプロダクトの追求にエネルギーが注がれるのだ。

これが営業ヘビーな日本の場合、経営者が営業畑出身だったり、横のつながりを活用した法人営業を通じた顧客獲得をする企業が多かったりする。

その結果、日本の企業では、プロダクトの品質よりも、営業に重点が置かれ、世界的に見ても魅力の低いプロダクトになってしまいがちである。

3. 黒字化や上場が目的になりがち


日本のベンチャー企業のひとまずの目標ななんでだろうか? 恐らく上場だろう。その為にはなるべく売り上げを稼ぎ、黒字化を目指す。すでに上場している企業でも、サービス展開するにあたり、売り上げと利益の獲得がゴールとなる。

実はこれもグローバル視点で見ると、日本企業が抱える大きなハンデとなっている。上場や利益獲得を目的にすると、どうしてもユーザーにとって使いにくいサービスになりがちであるからである。

例えば、メディア系のサービスを例に考えてみよう。恐らく、その収入源は主に広告となる。しかし、画面上に広告が表示される事はユーザー体験的にマイナスになる。イコール、プロダクトの魅力が下がる。

これが、例えばシリコンバレー発のサービスの場合、売り上げや利益度外視で展開される。なぜなら、彼らにとって最も重要なのはユーザー数であり、ユーザーの伸び率であるからだ。

すなわち、ユーザーが最も喜ぶプロダクトを作ることに全力が注がれる。なぜそんなことができるのか?それがスタートアップと呼ばれるゲームのルールだからだ。海外では、売り上げが少なくても、大赤字でも、大型の資金調達もエクジットができる。

例えば、Instagramは売り上げがほとんど無い状態にも関わらず、Facebook社に1,000億円以上で買収されたし、Uberに至っては、毎年3,000 – 5,000億円の赤字でも、10兆円近い規模での上場を達成した。

これが、グローバルで戦う際のルールであり、ユニコーンやGAFAのようなメガ企業を生み出す下地になっている。

しかし、日本国内だけでビジネスを展開してしまうと、評価額も投資額もエクジット額の規模も1/10以下になりがちで、全てがスモールスケールになる。

それにより、日々の売り上げと利益に重点が置かれてしまう。そして上場する為に、どうしても限られたユーザー数の中から黒字化のための日銭稼ぎが優先され、ユーザー体験が犠牲となる。

結果として、ユニコーンも生まれにくいし、世界的な競争力のあるプロダクトも出てこないといった悪循環に陥っていると言わざるを得ない。これが、日本における全てがスモールスケールの「箱庭エコシステム」なのである。
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文=Brandon K. Hill(CEO of btrax inc.)

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