人間にとって体の部位の“一等地”とも言える「顔」に装着して使うことを想定したメガネ型ウェアラブル、あるいはスマートグラスとも呼ばれるデバイスは、これまでにも多くのメーカーが製品化してきた。ドコモが発表した軽量ディスプレイグラスの試作機は質量が約49gと驚くほどに軽く、スマホとケーブルでつなぐだけで簡単に映像と音声が楽しめるという個性を備えている。
ドコモがメガネ型ウェアラブルの開発に注力する理由と勝算を開発担当者に聞きながら、筆者も実機を体験した。取材に答えていただいたのは、軽量ディスプレイグラスのプロダクト企画を担当する津田浩孝氏と石丸夏輝氏、ならびにプロダクトデザインのマネージャーである吉田恵梨子氏の3名だ。
軽量ディスプレイグラスを担当するNTTドコモの吉田氏(左)、石丸氏(中央)、津田氏(右)
「軽さが正義」を徹底追求
現在ドコモが試作を進めるのは、フルHD(1920 x 1080画素)マイクロ有機ELディスプレイの映像をハーフミラーに反射させて、両方の目で透過型スクリーンに映るコンテンツを視聴するメガネ型ウェアラブルデバイスだ。映像の背景に実際の景色が透けて見えることから、表示される動画や画像データが“ながら見”できる使用感がおもしろい。
映像を両目で視聴する透過型スクリーン搭載のメガネ型ウェアラブルデバイスとした
ソース機器との接続は汎用性の高いUSB Type-C端子を搭載するケーブルにDisplayPort規格の信号を伝送する有線方式とした。USB Type-C端子を備えるスマホから映像・音声信号を送り出し、バッテリーを給電できる。筆者のMacBook Airにも接続して使うことができた。
スマホのUSB Type-C端子に接続。スマホにBluetoothキーボードをつなげば、簡易なリモートワーク環境がつくれる
MacBook AirのThunderbolt端子に接続してデュアルスクリーン的な使い方もできる
その質量を約49gまで軽くできた理由は、本体にCPUやストレージ、センサーにバッテリーなどディスプレイ以外の加重の要因になるモジュールをあえて載せなかったからだ。ケーブルでつながるスマホやパソコン側にコンテンツの再生、電源を依存することで、送り出されたコンテンツを「表示するだけ」のデバイスとしている。
マイクロOLEDの映像をハーフミラーに反射させて視聴する
ゆえにドコモでは本機を「ディスプレイグラス」と呼んでいるのだと、プロダクト企画担当の津田氏が説いている。津田氏は開発の経緯を「本体を徹底的に軽くして装着感が向上すれば、メガネ型ウェアラブルがより広範なユーザーに受け入れられる市場性が見えてくるのか確かめたいという思いから試作を開始した」のだと振り返る。