今後、ラジオパーソナリティやアナウンサーに代わってSNS発の「声のインフルエンサー」が誕生していくのだろうか。
日本でいち早く音声マーケットに目をつけ、2016年に音声メディア「Voicy」を創業した緒方憲太郎代表に、Clubhouse熱の裏側と音声コンテンツの可能性について聞いた。
シンプルな設計だからこそ万人受け
──Clubhouseがこのタイミングで日本で流行したのはなぜだと考えますか?
Clubhouseは2020年3月にアメリカでリリースされたサービスです。海外ではすでに広がっていて、その盛り上がりは一旦落ち着いていましたが、日本で急激に広がったのは緊急事態宣言の影響が大きいと思います。20時以降、人に直接会うのが難しくなった、まさに今しかないというタイミングでした。
招待制の機能をフックに、スタートアップ界隈から芸能人に波及し、著名人の話を聞いてみたいと思った一般人のユーザーも増加しました。
また、SNSの「先行者の優位性」を多くの人が理解していた背景もあります。例えば、YouTubeでは後発のタレントはかなり苦戦していると言われている。タレントの中にも、事務所に頼るのではなく自分の力で生きていかなくてはと考える人が増えてきました。そんな状況で、「新しいSNSが出てきたらすぐに参加しよう」という熱量が、幅広い層でふつふつと高まっていたのだと思います。
──Clubhouseの流行を受けて、Instagramではライブルーム、Twitterでは音声ルームなど、既存のSNSで続々と新機能が開発されています。こうした影響を及ぼすほどスケールしたのはなぜでしょうか。
正直、「話題になってるから使っとかなきゃ」「iPhone持ってるなら使っとかなきゃ」という雰囲気はあったと思います。拡散の起点は「Clubhouseを使ってよかった」という声ではありませんでしたよね。
さらに、日本ではテレビが完全にネットの後追いになっているので、ネットで話題になったものをテレビがさらに拡散してくれる構図があった。海外で人気が出たものであることも、「キャッチアップしなければ」という気持ちを煽ったのでしょう。
Clubhouseは、人から人へ連鎖していくサービス設計が優れていました。シンプルなつくりだからこそ万人に受け入れられたとも言える。不況下、多くの人が抱く「チャンスに飛び込みたい」「盛り上がりたい」という気持ちに、うまく乗っかったのではないでしょうか。