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企業の幹部登用ではまだ男性優位にあり、女性の幹部への積極登用は企業にとっての課題となっている。社会進出の女性のロール・モデルができれば、次の世代の女性への大きな自信にもつながる。

そして、森発言で、いちばん不適切だったのが、性差による決めつけだ。「話が長い人」は、男性でも女性でもいる。これを「女性は」とくくってしまったのが、致命的な問題だ。このような外見、性差、人種などでくくることが、偏見、差別の本質である。

謝罪撤回会見を見ても、森会長が、事の本質を理解していないことが読み取れる。謝罪撤回すれば収まる問題と、収まらない問題がある。これは発言者の立場や発言内容から考えて、後者だと思う。

2005年にハーバード大学のローレンス・サマーズ学長(当時)が、科学と工学のトップレベルの研究者には男性が多いことの説明として提示した3つの「仮説」のうちの一つが、「男性と女性の本質的な能力の違い」で、これが女性差別である、という批判が大学の内外で高まり、結局学長辞任に追い込まれている。

5日になると続報が入った。森会長は、インタビューで「会長職に未練はなく、いったんは辞任する腹を決めたが、武藤敏郎事務総長らの強い説得で思いとどまった」と語った。これで、森会長一人の責任から、組織委員会全体の責任になった。

組織委員会には、森会長の下に6人の副会長がいるが全員男性、評議員6人中女性は1人、理事25人中女性7人で、そもそも組織委員会がこの問題で、自浄作用を果たすガバナンス体制にはなっていない。「わきまえた」女性しか採用せず、男性が圧倒的優位の組織が、そもそも問題だったのだ。悪循環が続いている。(2月8日記)


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学特別教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著に『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。

文=伊藤隆敏

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