是枝監督に続くか? 濱口竜介「偶然と想像」がベルリン映画祭で銀熊賞

濱口竜介監督(2018年のカンヌ国際映画祭にて、Getty Images)


今回の受賞で、劇場での公開も加速されると思われるが、早くもその「経済効果」にも期待が高まる。

過去の例で言えば、本木雅弘主演の「おくりびと」(滝田洋二郎監督)は、2008年9月の公開日直前に、第32回モントリオール世界映画祭で最優秀作品賞を受賞。予想外の受賞であったためか、関係者は誰も現地に出かけていなかったが、この受賞を呼び水にして、地味な題材の作品であったにもかかわらず、じわじわと観客動員を伸ばした。

結局、年を越してもまだ劇場上映が続くロングランとなったが、さらに、2月に入り、第81回アカデミー賞の外国語映画賞(2019年からは国際長編映画賞に名称変更)を受賞すると、さらに観客動員を伸ばし、最終的には64億8000万円の興行収入をあげ、2008年公開作品のランクでも第3位に入った。

また、2013年5月、是枝裕和監督の「そして父になる」(福山雅治主演)が、第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。現地で是枝監督や福山が歓喜した受賞の模様は日本でもあまねく報じられ、国内での反響も大きく、これにより公開日が当初の10月5日から9月28日に繰り上げられた。

公開は全国309スクリーンで上映され、初日2日間で興行収入約3億円、観客動員25万人余りを記録、最終興行収入も32億円を数え、是枝監督の作品としては異例の大ヒットを記録した。さらに、2018年、前述のカンヌ国際映画祭で最高賞に輝いた是枝監督の「万引き家族」は、「そして父になる」を超える最終興行収入46億円を叩き出している。

今夏には、濱口監督の新作として、村上春樹原作の「ドライブ・マイ・カー」の公開も控えているが、これらの過去の実績を鑑みれば、「偶然と想像」も少しでも早い劇場公開が待たれる。

ちなみに、「偶然と想像」には3つの短編が含まれているが、濱口監督は最終的には同様のテーマで、全7話を予定しているという。「このシリーズを自分の40代を通じての仕事としたい」と語る濱口監督、是枝監督に続く日本を代表する映画監督になる日は近いかもしれない。

文=Forbes JAPAN編集部

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