コロナ禍がトリガー引いた「スポーツ産業の変革」リーダーたちはこうみている|PwCスポーツ産業調査(上)

Photo by Tottenham Hotspur FC/Tottenham Hotspur FC via Getty Images

PwCのスポーツビジネスアドバイザリー・チームは、世界のスポーツ産業が向かう方向性についての示唆を得るため、2016年から毎年、各国のスポーツ関係者を対象とした「PwCスポーツ産業調査」を行っている。

5年目を迎えた今年度の調査は、世界のスポーツがようやく再開の動きを見せた2020年6〜7月に実施され、50カ国・700名を超える回答を得た。

2020年は、世界中がCOVID-19に覆われた年であり、スポーツ産業は大きなダメージを負った。3〜4月には、世界各国のプロリーグ・大会においてシーズンの延期・中断という判断がなされ、その後6〜7月にはシーズンが再開するものの、多くは無観客での開催を余儀なくされた。

COVID-19による影響や見通しもまだまだ不透明な状況の中で、各国のスポーツ産業界のリーダーたちはどのような見通しを持ち、どう変わろうとしているのか──。

調査の要点を3回に分けて、紹介する。

>> 加速する「スポーツメディア・コンテンツの複雑化」大いなる再統合の時代へ|PwCスポーツ産業調査2020(中)
>> スポーツ業界は「eSports」とどう付き合うべきか?|PwCスポーツ産業調査2020(下)


世界全体/地域別スポーツ市場の成長率見通し


まず、世界全体でのスポーツ市場の成長見通しを見ていきたい。

・市場成長の展望(回答者が最も良く知っている市場別)━ 今後3〜5年間の年間成長率の予測

市場成長の展望
出所:PwC、N=771

世界のスポーツ市場全体の平均成長率見通し(今後3〜5年間)については平均で3.3%という値となっている。この平均成長率見通しについては例年6〜7%程度の値を示すことが多いが、COVID-19影響下においては当然ながら成長率も低下することが予想される。

ただ、地域別に見るとその景色は多少異なっており、欧州・北南米・オセアニアでは-1.3〜3.6%と控えめな見通しとなっている一方、中東とアジアでは平均成長率として7〜8%という従来と同等の成長率を予想する声が多くを占めている。

これは、政府による積極的な投資姿勢や、今後予定されている国際的なメガイベントが楽観的な予想につながっているものと考えられる。

ライツホルダーの収益構造の変化


続いて、スポーツの権利保有者(主にリーグ・クラブ)にとっての収益源はどのように変化していくのだろうか。

・予想される年間成長率(収益源別)━ 今後3〜5年間の年間成長率の予測

収益源別の成長率
出所:PwC、N=771

想像に難くはないがスタジアム・アリーナへの来訪が前提となるチケット/ホスピタリティについては成長が見込めない状況となっている。また、企業の業績悪化などの影響を間接的に受ける形でスポンサーシップ/広告関連収益についても成長が鈍化することが予想されている。

一方で、スポーツベッティング*1 とファンタジースポーツ*2 の領域については高い成長率が期待されており、今後3〜5年のスポーツ産業の成長を牽引する可能性がある。この背景には、2018年より米国ではスポーツベッティングが(州によって法制化の状況は異なるが)解禁され、スポーツベッティング市場が急速に成長していることにも起因しているものと考えられる。

*1:スポーツの結果を予測し、結果に賭けをする活動
*2:現実世界に実在する選手の中から自分でドリームチームを編成して各試合、シーズンを通して他の参加者とポイントを競い合う活動
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文=菅原政規、安西浩隆、土斐崎豪

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