──1970年代から80年代にかけて、日本は世界経済をリードする存在でした。輸出大国で、最先端で高品質の製造業を誇っていました。日経平均株価は1989年末に史上最高値をつけます。その後の日本に何があったのでしょうか。
アトケソン:日本は今も世界3位の経済大国ですが、30年たっても日経平均は当時の水準を取り戻せていません。なぜか。主に人口動態と競争が原因です。日本の人口は減っていて、高齢化も進んでいます。日本は世界有数の長寿国であると同時に、出生率は低下し、移民はほとんどいません。一方、競争面では、中国や韓国、東南アジアの大半の国々が、大規模で、日本よりもコストが安く、しかも優秀な製造業を擁するようになりました。
──日本も状況を改善するために手を打ったが、あまり功を奏しなかったと。
ホートン:成長のテコ入れやデフレリスクの軽減のために、日本政府は金利を引き下げます。過去25年間、日本の10年物国債の利回りは低下しています。4年前、日本の新発10年物国債の利回りはマイナスをつけ、足元もゼロ近辺のままです。
10年物国債の利回りは長期的な経済成長見通しの指標です。ほかの条件がすべて同じであれば、急成長している国では長期金利が低成長の国よりも高い傾向にあります。
──米国ではどうですか。
アトケソン:日本と同様に、米国も長期的な経済成長率が下方シフトしており、10年物国債の利回りは数十年にわたって下落傾向にあります。ただ、日本と違って、マイナスになったことはありません。
マクロ経済成長の観点から言うと、昨年8月に約0.5%だった10年物米国債の利回りは今週(2月下旬)、1.3%程度まで上がっており、成長見通しの改善を示しています。金利が上昇すると株価収益率(PER)に下押し圧力がかかりますが、長い目で見れば、インフレの少ない成長は経済停滞やデフレよりもずっと良いものです。
──投資家については。
ホートン:成長の先行きを占う指標は株式市場です。S&P500種株価指数は今週、史上最高値を更新しています。
──つまり米国は比較的好調で、日本より良い状態にあると。S&P500は2008年の金融危機時の6倍近くに高騰しています。日経平均は3倍ちょっとですから、2倍の伸びということになりますね。
アトケソン:日本と同様に、米国も高齢化やグローバルな競争の激化に直面しています。ただ、日本に比べると、米国の経済システムはオープンで、そのため人口の伸びも大きく、ダイナミックな資本市場の資金に支えられたイノベーションも活発で、また世界中から優れた人材がたくさん集まってきています。
金利が上昇すると、PERの高い株はPERの低い循環株よりもパフォーマンスが悪くなるかもしれませんが、金利の上昇は成長見通しの向上を示しているわけですから、総じてプラスの指標と言えるでしょう。
──米中の競争が今後どうなるかはわかりませんが、ある程度の希望はもってよさそうですね。