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だからこそ、これからの時代に売れるものは、スキルだけでなく「ギルド的な職能」のつながりをもったコミュニティ、さらにいえば「コミュニティへの参加権利」ではないだろうか? 

スキルを得るために学校に授業料を払って入学するように、ある程度スキルを身に着けた個人が、お金を払ってすでに個の力を持ったプロフェッショナルのもとに弟子入りする。プロは実際の業務に弟子を入れてあげ、指導しながらスキルを実践的能力にまで高めて、ある程度成長したら個としての仕事を紹介し独り立ちを応援する。

仕事を依頼する側としては、「あーあの人の弟子だからね」ということが信頼となり、仕事も頼みやすい。どのプロがきちんと弟子を育てられるかということはWEB上で可視化され、ブラックな仕事を押し付けるプロは市場から退場させられる。

昭和の職人のような古くさい話に感じるかもしれない。が、まさに、最先端のオンライン空間において昭和の職人のような世界が展開されるのが、21世紀の仕事の風景になるだろう。自分を育ててくれる、そう「信じられる師匠」を買う時代になるのだ。

以上が私が考察する「風の時代に買われるもの」の考察だ。ここまで書いてみて「風の時代」はなんだか楽しそうな時代に思えてきた。

自分だけに最高に似合う衣服やコスメをまとい、美味しいだけでなく人柄もキャラクターも大好きな生産者の食を味わい、狭いながらも多層化した家を楽しみ、いやいや付き合わなくても良い友人と思いっきり同時体験で関係を深め、信じられる良き師匠を見つけて社会人として自立する。

なんだか自由で、感動的で、生き甲斐のある21世紀がやってきそうだ。こんな時代の買物が、みなさんに幸せを届けてくれることを祈ってやまない。

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山本 泰士(やまもと・やすし)◎博報堂買物研究所所長博報堂買物研究所所長。2003年東京大学教育学部卒。マーケティングプランナーとして教育、自動車、飲料、トイレタリー、外食などのコミュニケーションプランニングを担当。2011年より生活総合研究所にて、生活者の未来洞察コンテンツの研究、発表を担当。「総子化」「インフラ友達」「デュアル・マス」などの制作・執筆に関わる。2015年より博報堂買物研究所に異動。近未来の買物行動予測研究と、買物行動を起点としたマーケティングに従事。著書に、『なぜ「それ」が買われるのか?―情報爆発時代に「選ばれる」商品の法則』(朝日新聞出版)など。

文=山本泰士 編集=石井節子

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