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2021.03.17

博報堂買物研究所が考察。風の時代に売れるのは「オンライン徒弟関係」

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食:「声が聞こえる」ものを食べたくなる


このコロナ禍、食分野で「ネットスーパー」「外食宅配」の存在感がぐっと高まった。

従来、日本では飲料・食料品はリアル店舗に行って自分で商品を見極めて買うもの、という思いが強かった。しかし、コロナ禍で外出しにくい状況も相まって飲食料品のEC需要が大きく伸長。JCBナウキャスト社のデータ分析によると飲食料品のEC購入は2020年1月と年末の12月を比較すると30%以上の伸びを見せている。(「JCB消費NOW」による2020年消費動向総括。PRTIMESより

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特にその中で注目したいのは、「食べたいものを生産者から直接購入する」動きだ。在宅での飲食が増えたこともあり、美味しいものを家で食べたいニーズが高まった。その時に、全国の腕利きの生産者と消費者を直接ECで結びつけるサービスの利用が大幅に増加したのだ。

これまでもスーパーの店頭で「私がこの野菜を作りました」という写真と名前があると「顔が見える」と好評だった。今度はさらに進んで、生産者によってはSNSで記事や動画を通じて自分たちの生産のこだわりを語るという「声が聞こえる」アピールを行う充実ぶり。美味しいものを作ってくれた生産者にはファンがつき、出品するとすぐ売り切れる、なんて動きも出ている。

いわば生活者自身がSNSや動画サイトでの発信を頼りに「私のお気に入りの生産者」を見つけ、つながり、購入する喜びがここで生まれているのだ。

なんとなくスーパーの店頭に行って安かったから、大量陳列されていたから──ではなく「埼玉の山口さんのネギは有機肥料で、手間暇かけて毎日まわりの雑草を取り除いているらしい。おばあちゃんはのど自慢出場経験あり、ひょうきんな人」というパーソナリティまで含めたエモーショナルな「信じられる」理由が買物の喜びを生み出しているのだ。

さらに、いまフードロスや動物肉生産にまつわる水資源大量消費問題なども受け、エシカルな意識も世界的に高まっている。食を選択する際に「なんでそれを食べるのか?」と問い直す意識は今後ますます高まり、ただ美味しいだけでなく、その生産者や企業のその食品をつくる背景や作り方も含めて食べる理由」が見つめ直されるようになるだろう。
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文=山本泰士 編集=石井節子

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