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2021.03.07

エンタメとリアルに見る、韓国「財閥」の醜美な世界

韓国の人気ドラマで財閥がネガティブに描かれるのが定番だ。果たして実際はどうなのだろうか?(Shutterstock)

韓国の財閥と聞いて、思い浮かぶことはなんだろうか。賄賂、後継者争い、一族のスキャンダル、金による完全支配。近年流行している韓国ドラマでは、財閥が美しく描かれているシーンは全く無いと言っても過言ではないだろう。

世界を熱狂させた「愛の不時着」では、財閥の娘である主人公ユン・セリ(演ソン・イェジン)が、同じ血筋である強欲な兄弟たちに蹴落とされるシーンが何度もあった。また、女性だけでなく男性の注目をも集めた「梨泰院クラス」のあらすじは財閥への復讐劇であったため、財閥一家による残酷で憎い描写が非常に多かった。

このように、家族経営の財閥は韓国の経済を大きく支える一方で、現実社会でもフィクションドラマでも、ネガティブな存在として扱われてきた。

韓国のMBC NEWSは、財閥を分析した動画で視聴者の注目を集めている。同社は2018年7月16日からフェイスブックやユーチューブなど、SNSで「14F(イルサエプ)」というチャンネルを設け、20〜30代をターゲットに経済ニュースを中心に発信している。

「14F」のニュース動画から、韓国メディアの目線で財閥を考察する。

応援される「異常な」財閥



Youtubeチャンネル「14F(イルサエプ)」

悪者扱いされ、世間から遠ざけられがちな財閥だが、14Fのチャンネルに並ぶタイトルを眺めていると、一つ、目に留まった動画があった。「財閥なのに愛される異常な財閥」。

この「異常な」肩書きを獲得した財閥は、韓国の最大手の化学薬品メーカーであり、電化製品も多く開発しているLGグループのことだった。LGグループは韓国で、「財閥らしくない財閥」として有名なのだ。

独立運動の遺跡復旧運動に巨額の支援金を投じたり、PM2.5が流行した際には教育施設に1万台もの空気清浄機を寄付したり、社会貢献にも積極的なのである。このような慈善活動を社会にひけらかすことなく、むしろ隠す。その性格を見て、一部では「人の心を動かす優しい馬鹿」と言われているほどだ。彼らの事業がうまくいくよう、応援する人も少なくない。

韓国では、富豪が寄付を申し出るのが珍しい。財閥ではないが、先月メッセージアプリ「カカオトーク」の創業者キム・ボムスが約1兆円相当の自らの資産の半分以上を寄付すると発表して、世間を驚かせた。それが財閥であれば、なおさらだ。

また、財閥がエンタメで描かれる際のお約束とも言える「家系内争い」。創業者が子供を産み、孫ができると、財産と権利を巡って必ずといっていいほど対立が起こる。しかし、動画ではLGグループの場合は違うと紹介されている。LGの創業者であるク・イネ(1907~1969)は、弟が5人だった。男兄弟皆が事業に協力し成長させてきた。代表や会長、理事長、社長など、一族には50人以上の一定の権力者がいるにもかかわらず、家族間の対立がないと言われている。
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文=裵麗善/Ryoseon Bae

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