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そしてこの状況に対応するように浮上した買物のテーマが「心地よい買物」だ。急速に発展する技術が個人の購買履歴や、興味のありそうなカテゴリの売れ筋商品を分析してお薦めしてくれる。このサイトで買えば大体安いし、口コミも悪くないものを手に入れられる。そんな買場でモノや情報の選択ストレスなく効率よく買えることを生活者は求めはじめ、その生活者に最適なタイミングでレコメンドと価格を提示する技術を磨いた大手ECサイトは大いに売り上げを伸ばした。

こんな状況の中、迎えたのが「風の時代」だ。

2021年現在も進展する情報爆発の中で「心地よい買物」を求める生活者の欲求は止まってはいない。2030年にむけてただ「心地よい」だけでない、買物への欲求が動き始めている。それが「風の時代」の消費を動かす大きなテーマになるのではないかと筆者は考える。

それが「信じられる買物」だ。

風の時代の買物テーマは「信じられる買物」


いま、生活者はただ効率的で便利な「心地よい」だけの買物に満足をしなくなってきている。コロナ禍の前後、世界の買物で話題になったのはインフルエンサーがモノをライブ中継しながら売るライブコマースや、SNS上での継続的な情報発信を通じて売るソーシャルコマース。さらには独自の世界観とビジョンを持つブランドが製造から販売、配送までを一貫して行うD2Cの勃興だ。

これはただ、最適なモノを、最適な価格で効率よく買う「心地よさ」だけで成立しているわけではない。ここにはインフルエンサーのコンテンツを支える楽しさがある、日々役立つ情報をくれる人から買う喜びがある、世界観とビジョンへ参加する熱狂がある。今までの「心地よい買物」を超えたエモーショナルな価値が、買物のペインをなくすだけでなく喜びを生み出しているのだ。

いわば私はこの人から、このブランドから買うべきなのだ、という生活者が「信じられる価値」がそこにはある。風の時代は「情報や知識など形のないもの、伝達や教育などが重視(前掲)」される時代と語られていたが、まさに「信じられる」という形のない価値が買物を動かすドライバーになるのだ。

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山本 泰士(やまもと・やすし)◎博報堂買物研究所所長博報堂買物研究所所長。2003年東京大学教育学部卒。マーケティングプランナーとして教育、自動車、飲料、トイレタリー、外食などのコミュニケーションプランニングを担当。2011年より生活総合研究所にて、生活者の未来洞察コンテンツの研究、発表を担当。「総子化」「インフラ友達」「デュアル・マス」などの制作・執筆に関わる。2015年より博報堂買物研究所に異動。近未来の買物行動予測研究と、買物行動を起点としたマーケティングに従事。著書に、『なぜ「それ」が買われるのか?―情報爆発時代に「選ばれる」商品の法則』(朝日新聞出版)など。

文=山本泰士 編集=石井節子

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