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2021.03.16 08:00

「揃える」「憧れる」から心地よさへ。風の時代の買物はどうなる?

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博報堂買物研究所。広告会社にあって、企業の「売る」技術を磨くだけでなく、生活者から見た「買いたい!」と思うツボはどこにあるのかを洞察するシンクタンクだ。同研究所所長の山本泰士氏に、2020年の年末から巷をにぎわしている「風の時代」に何が売れるのか? について以下ご寄稿いただいた。


はて、「風の時代」とはなにか?

調べてみると2021年、今年から西洋占星術での星のめぐりが変わり「風の時代」が始まったらしい。

2021年1月1日のForbes JAPANの記事『「持たない」自由を楽しむ 新たな「風の時代」にやめるべきこと』によれば、以下のとおりだ。

「きたる『風の時代』は、『風』が目に見えないように、情報や知識など形のないもの、伝達や教育などが重視され、人々は何より『知る』ことを求めていくことになると言われています。つまり2021年は、『持つ』ことから『知る』ことを重視するように世の中の価値観が大きく変わる、時代の曲がり角なのです」

この時代、いったい何が買われるのか?

筆者はこれからの時代の消費テーマは「信じられる買物」になると考えている。

一体どういうことか? その理由を「戦後買物史」の解説とともにひも解いてみよう。

「三種の神器」は冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビが──「揃える買物」


戦後から今まで、生活者が買物に求める価値観は生活環境、技術の進歩とともに変化しつづけてきた。

例えば、まだまだ貧しく、モノも十分にいきわたっていなかった戦後から高度経済成長期の買物のテーマは「揃える買物」だった。冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビが三種の神器ともてはやされ、それを買うために貯金をし、ボーナスをはたく。国民が共に中流生活を求めた時代。

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それが1970年代後半、高度経済成長も一服し、安定成長期に突入。ある程度豊かになり、一億総中流と呼ばれる生活者には「憧れる買物」がテーマになる。中流生活を達成した中で人より上のものを持ちたい、差別化したいという欲求が顕在化したのだ。いわゆる中流層でも手の届く外国製のブランドに憧れたり、高級品を買い求めることが買物の喜びになった。いわゆるバブル景気に沸いた時代、豊かになった人々はこぞって高級外車を買い、六本木では高級外車が当たり前すぎて差別化できないといわれたほどだ。

「買物ストレス」の時代に高まる「心地よい買物」への欲求──


しかし、そんな安定成長期も90年代前半のバブル崩壊とともに終焉。90年代後半からは、長期化する不況、低成長、デフレの中でいかにコストパフォーマンスの良いものを求める「賢い買物」がテーマになる。この頃からインターネットの普及が始まり、口コミサイトも登場。その中で検索を駆使しながら自分なりに情報をかき集め、検討し賢く買物することが喜びになった。

ただ、その状況も長続きはしない。2010年代に入るとSNSの爆発的普及で情報量は増加。さらにフェイクニュース、やらせ口コミなどの影響で情報の質は玉石混交になった。そこで自分なりに情報を集め、比較検討しようと思っても、どれが正しいのか? 自分にとって良い選択なのかが見極められなくなる。いわば「買物ストレス」が一気に増大する時代を迎えたのである。

この状況下で、生活者は欲しいモノはあるのに、どれを選ぶのが正しいのかがわからない、だから買えない、という状況を経験することになったのだ。
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文=山本泰士 編集=石井節子

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