そんな「QQ」のようなチャット機能を、はじめてECに取り入れたのが、アリババが運営する中国最大のECプラットフォーム「淘宝(タオバオ)」でした。
ユーザーは、商品について少しでもわからないことがあれば、チャットを通じて気軽に問い合わせができるようになりました。
また、実物を確認できないECでの買い物に対する不安を解消するというネットショッピング最大の弱点を克服することにつながったというのもチャットサービスの大きな貢献のひとつです。
チャット機能のメリットはお店側にもあります。ユーザーの疑問点を購入前に取り除けるため、返品を少なくできたり、顧客とのコミュニケーションをとることができるため、リピーターやファンを獲得できるからです。
中国のネットショップはチャット対応に力を入れており、早ければ10秒程度で返信します。中国のネットショップのチャットに対する平均反応時間はなんと16秒です。
文面もフレンドリーで親切です。最近はAIによる対応も多いのですが、その文面もユーザーに好感を得られるよう工夫されています。
「おまけをつけてくれないか?」もチャットで
そして、何より重要なのは値引き交渉ができること。中国人は、値引き交渉が好きです。実店舗では、たとえ百貨店のような定価販売が前提のお店であっても値引き交渉が行われてきました。
日本では信じられない話ですが、中国のECでは「もう少し安くならないか?」「おまけをつけてくれないか?」などの交渉がチャットで行われています。お店側もそれを利用して、「コメントしてくれたら安くする」「もうひとつ買ってくれたら割引する」など、顧客と交渉しています。
ちなみに、チャットでのコミュニケーションという画期的なサービスを最初に始めた「タオバオ」は、中国3大IT企業のひとつ、アリババグループの最重要サービスです。
とにかく巨大で、月間のアクティブユーザー数は8億8000万人を超えています。また2020年11月11日の独身の日(中国のネット通販のセールが大々的に行われる日)には1日の売上が13兆円を超えました。これは、日本の楽天市場の1年間の売上の3倍にあたる数字です。
特徴的なのは、動画を用いた販促機能です。通常のECの他に、ライブ配信(タオバオライブ)で商品を販売できる機能や、ひとつの動画で関連する複数の商品を紹介し、それぞれを購入できる機能もあります。
ライブ配信での販売は近年急成長を遂げており、2019年の「独身の日」には1日で200億元(約3200億円)を売り上げました。
近年は、多くのフォロワーを持つ人気配信者が現れ、KOL(Key Opinion Leader の略で、中国市場におけるインフルエンサーを指す言葉)のような存在になっているため、彼らを起用したマーケティングが盛んに行われています。