突然のパートナーの転勤。キャリアか家族か?ではない令和の働き方

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瀬尾:アメリカでは組織から出ていく人も多いですし、会社で大きなレイオフがあってみんながいろんな組織に散らばることも多々あります。長期的に見ると、過去の関係性が転職のときに効いてくることもあるので、個人個人の人間関係がキャリア構築に役に立つという背景があり、上司が部下のキャリアをサポートしたり、互いにサポートしあったりというのは日本よりも一般的に行われているように思います。

倉石:人が動くことによって組織が活性化していくというのは、アマゾンで働いていて感じます。 人が停滞していると組織は活性化しませんからね。

100%自分の思い通りになるということはあり得ない


竹崎:最後に、これまでの経験を振り返って、気付きがあれば教えていただけますか。

辻:やはり、人生もキャリアも自分で作っていくんだという気概がすごく大事です。私自身、国際協力やインドネシアという文脈で、環境省の中でのオンリーワンを目指して、自分でキャリアを作るという気持でいます。ただ、人事との調整を経て学んだこととして、組織人である以上、100%自分の思い通りになることはあり得ない。だからこそ、職場との対話がとても大切で、対話を通じて自分なりの道が見えてくると思います。組織人として、この姿勢は常に持っていたいです。

瀬尾:それぞれ置かれた状況は違うので、全員に当てはまることはないと思いますが、私たちのストーリーが、こんな道や考え方もあるんだという材料になれば嬉しいですね。新たな選択肢や考えがあることを知るだけでも、アイディアが生まれることもあるので。

倉石:リクルートの創業者である江副さんの言葉に「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉があるのですが、自分を鼓舞するためにも相手を励ますためにも、折に触れてつかっています。どうしても人は変化を恐れてしまいますよね。今のままが良い。でも機会を自ら創り出し、その機会によって自らを変えよと。マイナスの変化の時も、プラスの変化の時もあるかもしれませんが、自分で能動的に動いた結果なので、受け止めて進んでいけると思います。

あと、もし子育てや家事をしながら仕事も頑張っている方がいたら、「家庭内バケーション」の取得をお勧めします。我が家はどうしても私の方に家事の負担がくるので、2年前から、毎年8月に1週間、一切家事をしない「家庭内バケーション」という期間を作りました。その間、私は好きなことをして過ごします。子育て、仕事、家事と全てを100%パーフェクトにすることはできません。そのときにできる限りのことをやったなら、自分を褒めて良いと思います。

竹崎:江副さんの「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という言葉は、まさに、倉石さんが体現されている、自分の人生を計画ありきで進めるのではなく、目の前のことをしっかりやりながらも、環境の変化や偶然も含めて楽しみ、自然体で流れを捉えていく姿勢に通じていますね。お三方の多様性や違ったキャリアの描き方それぞれが参考になります。ありがとうございました。


倉石彩乃◎旦那様の勤務地である米国シアトルにて、日本語補習校教師、人材派遣会社での勤務を経て、Amazon本社勤務(Quality Auditor)。早稲田大学卒業(心理学専攻)

辻景太郎
◎環境省職員。奥様がインドネシア政府職員であることから、職場との調整を経てインドネシア赴任を実現、現在赴任4年目。UCLA修了(公共政策)

瀬尾亜由◎製薬業界に従事。米国滞在9年目。ファイザー日本法人、第一三共(アメリカ・ニュージャージー州)を経て、研究者である旦那様のカリフォルニア州での就業に伴い、Astex Pharmaceuticalsへ転職し、カリフォルニア州へ転居。ジョンズホプキンス大学修了(経営学・公共衛生学)

文=伊藤みさき 構成=竹崎孝二

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