「チッパゲドン」はなぜ起きたのか コロナ禍に米政策が追い打ち

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世界的に半導体チップが不足している状況にあるというニュースは、皆さんもすでにどこかで耳にしたことだろう。チップ不足により、スマートフォンなどの家電から自動車まで、さまざまな製品の生産が滞っている。

このいわゆる「チッパゲドン」を引き起こした要因はいくつかある。新型コロナウイルスの流行に伴うロックダウン(都市封鎖)により、中国ではここ1年にわたり半導体工場を含め多くの産業が活動を止めた。

同時に、人々の外出自粛が始まったことで、家電製品の需要が急増。親がリモートワークを、子どもが自宅学習を始める中、古いパソコンやルーター、ウェブカメラ、タブレットなど、さまざまな機器を新調する必要性が生じた。仕事や学習、娯楽に使う家電製品の需要がピークに達し、多くのメーカーの在庫が底をついた。

こうした中、メーカーの中には、自社の生産ラインを維持するのに十分なチップを確保できなかった企業もあった。特にフォードやトヨタなど、リアルタイムの生産ラインで大量生産を行う企業は、チップ不足により工場の操業停止を強いられた。自動車メーカーは通常、部品の在庫は大量には保持せず、必要な時に必要な分を供給する「ジャストインタイム方式」をとっている。対照的にアップルや中国企業の多くは、供給の問題に備えて大量のチップを備蓄しており、これにより市場の緊張はさらに高まった。

さらに、米国のトランプ政権が不要にも仕掛けた貿易戦争も、事態を悪化させた。米国は昨年12月、トランプ退任直前の置き土産として、それまで標的としていたファーウェイなどに加え、中芯国際集成電路製造(SMIC)をはじめとする電子機器部品製造大手を含む中国企業数十社を輸出入制限企業リストに追加。これら企業が製造する部品を他社製に置き換えようとしても簡単にはいかず、適応とホモロゲーション(承認)のための時間が必要だったり、場合によっては置き換え自体が不可能で、設計の全面的な変更が必要になったりする。

現在は多くのサプライチェーンでグローバル化が進んでいる。一方的な貿易戦争は無謀であり、トランプが詳細な分析をせずにこれを実行したのは明らかだ。バイデン政権は、主に国内産業での必要性に駆られて、米国の大手メーカーに影響する重要なサプライチェーンを見直す大統領令に署名した。こうしたメーカーには主に、製造する製品にマイクロプロセッサーや大容量バッテリーを必要とする企業が含まれる。

半導体の供給不足問題は、少なくとも2022年初頭まで続くとみられている。これにより、製品の売り切れが長期間にわたり続くことが確実となったチップメーカーの株価は跳ね上がっている。これは特に驚くべき結果ではなく、戦略的リーダーシップにおける興味深い教訓となる。グローバル化した世界では、自分の好き勝手を通すいじめっ子のような考え方では下せない決断がある。行動には、それに見合った結果が伴うのだ。

編集=遠藤宗生

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