未来を動かすバッテリー技術 今も残る根拠のない懐疑論

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エネルギーの移行をめぐる大きな思い込みの一つが、「バッテリー問題」だ。コスト面での懸念に加え、環境汚染の恐れが取り沙汰される使用済み電池の処分方法をめぐる疑念もある。

バッテリーがかつて、高額で性能も低かったのは確かだ。しかしテクノロジー分野でよくあるように、この10年でリチウムイオン電池の価格は88%も下落し、下げ止まる気配は全くない。2020年には、1kWh当たりの価格が100ドルを初めて下回った。これは前年比で13%安の計算だ。さらにこれは、リチウムイオンが未来を担う技術とみられている現段階の話であり、これ以外にも非常に有望な技術が開発されている。

10年前は多くの人が、電気自動車の問題はバッテリー交換の必要があることだと考えていた。しかし今では、バッテリーの持ちは思っていた以上に良いどころか、搭載する自動車自体の平均寿命をも大きく上回ることがわかっている。

すでに最大16年間または200万kmの長寿命バッテリーが存在しており、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)がいつでも生産開始できる体制にあるとされる。これは、現在8年または15万kmの寿命を保証しているテスラなど大手のバッテリーを大きく上回る性能だ。

バッテリーをめぐるもう一つの思い込みは、リサイクルに関するものだ。リチウムの採掘で一般的な露天掘りは環境を大きく破壊する。現在焦点となっているのは、どうすればリチウムをより持続可能かつ安価に調達できるかという課題だ。

リチウムの多くは依然として露天掘り(オーストラリアなど)または干上がった塩湖の地下にある鉱床掘削(ボリビア、チリ、アルゼンチンなど)により調達されている。露天掘りは化石燃料を使う必要があり、環境への影響が大きく、大量の水が必要とされ、リチウム1トン当たり約15トンの二酸化炭素を排出する。一方で英コーンウォール、ドイツ、米国などのように地熱水から抽出する方法は、環境への影響がかなり小さく、炭素排出量も非常に少ない。

また、多くの機器に使用されているリチウム電池はリサイクルされず、ただ電子ごみとなっているという批判が以前から出ている。これは、家電製品に使われるバッテリーが小型でリチウム含有量も少ないためリサイクルの費用対効果が低いことが原因だが、電気自動車のバッテリーには当てはまらない。
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編集=遠藤宗生

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