スースの作品は以前から、人種差別的な底意が感じられると批判されてきた。ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動が再燃するなか、現代社会に依然として残る人種差別的かつ無神経な描写をなくすことが、改めて重視されている。
ドクター・スース・エンタープライズは故人の誕生日だった同日に公開した文書で、絶版とする作品には「人を傷つけるような、誤った描写がある」と指摘。「ドクター・スース・エンタープライズが扱う作品がすべてのコミュニティーと家族を支援するものであることを確実にするためのより幅広い計画の一環」として、絶版を決定したと説明している。
同社は専門家や教育者からなる委員会とも討議と熟考を重ね、昨年中に対象作品の絶版を決定していたという。その6作品は、以下のとおり。
「McElligot’s Pool」
「On Beyond Zebra!」
「Scrambled Eggs Super!」
「The Cat’s Quizzer」
「And to Think It I Saw It on Mulberry Street」
「If I Ran theZoo」
そのほか「The Cat in the Hat」なども批判を受けているが、今回は対象外とした。同社は今後も「傾聴すること、学ぶことに尽力し、引き続き全作品の見直しを行っていく」という。
進む「時代遅れ」の見直し
こうした見直しの動きは、昨年からみられている。動画配信サービスのHBO Maxは、「風と共に去りぬ」の配信を一時停止。歴史的背景に関する注意書きを加えた上で、配信を再開した。
また、米食品大手マースは黒人男性の顔をトレードマークにしていた長粒米と関連製品のブランド「アンクル・ベンズ(Uncle Ben’s、ベンおじさん)」の名称を「ベンズ・オリジナル(Ben’s Original)」に変更。
ペプシコは所有するパンケーキ粉などのブランド「アント・ジェマイマ(Aunt Jemima、ジェマイマおばさん)を「パール・ミリング・カンパニー(Pearl Milling Company」)」に変えた。
これら2つのブランドと同様、アイスクリームバーの「エスキモーパイ」もまた、「時代遅れで人種差別的な表現」に依存しないためのパッケージとブランディングに関する再評価を行っている。
誕生日は「読書の日」
ドクター・スース(本名セオドア・スース・ガイゼル)の作品は、著者の死後も好調な売り上げを維持。書籍の販売のほか、テレビ番組や映画に関連した契約料などで、年間3300万ドル(約35億円)の収入を得ている。
フォーブスが毎年発表する「セレブの死後収入ランキング」ランキングでは昨年、マイケル・ジャクソンに次ぐ第2位となった。
ドクター・スースの誕生日は、米国の「読書の日(Read Across America Day)」でもある。前任の2人の大統領は任期中、この日にドクター・スースについて言及してきた。だが、ジョー・バイデン大統領は同日から始まる読書週間に合わせて公表した文書のなかで、スースの名前を出すことを避けている。