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2021.03.12

テスラで雪山へ。快適すぎるドライブで「車の役割」を考えてみた

Yauhen_D/shutterstock


テスラは、車以外にも太陽光発電、家庭用の電源ビジネスも手がけているが、こちらの事業もかなりの勢いで伸びてきている。移動手段としての車だけでなく、家庭が消費するエネルギーまでコントロールしようとしているテスラは、もはや自動車会社という括りでは語れなくなってきている。

今後、数100万台、あるいは数1000万台というレベルで、巨大な電池を搭載した車が走り回り、同じ規模で家庭にもソーラーパネルと蓄電池が普及する。そのとき、人々の生活のエネルギーを管理するのは、もはや電力会社ではなく、テスラになってしまう可能性もあるわけだ。つい最近、寒波がテキサスを襲って大規模な停電が発生したりしたが、こういった事態にもテスラの電源ネットワークが対応できてしまう時がくるのかもしれない。

もうひとつ今回の旅で考えさせられたのが、同じくイーロン・マスクが手がけるSpaceX社についてだ。この会社は、長期では人類を火星に移住させるという壮大なビジョンを追求してはいるが、短期では地球の低軌道上に何1000もの通信衛星を打ち上げてインターネット接続を提供する「Starlink」というビジネスを展開している。

現在はまだベータテスト中なのだが、これまでの衛星インターネットと違って、低軌道であるため、遅延がはるかに少ない高速通信が可能になる。

前回シャスタ山に宿泊した時は、この衛星インターネットの遅延を実際に経験し、Zoomのコールが遅延でほとんど使い物にならなかった。そのため今回はケーブルのインターネット接続を持つ街中のAirbnbを選んで宿泊しないといけなかったのだが、Starlinkのサービスが普及すればこうした心配もなくなり、もっと静かで景色の良い宿を選ぶこともできるようになる。

そうなってくると、これまでリモートワークをするには不向きであった過疎の田舎でも普通に仕事ができるようになる。さらにそこに移動するのも自動運転で楽になるとあれば、どこに住むのかという選択肢もまた大きく広がってくる。こうやって田舎でテスラ車を所有して住む人が増えてくると、そこでロボタクシーのサービスが一気に普及し、高齢者の足にもなって田舎が活性化する、なんていうこともあり得るのではないだろうか。

このように実際に新しいテクノロジーを体験していると、その先にどんな世界が広がるのかいろいろ想像することができる。もちろんその通りの未来がいつ来るのか、あるいはまったく来ない可能性もあるが、こうした想像力を駆使してテクノロジーがもたらす未来を創造していくのが起業家だ。

日本からもこういうワクワクするような未来を見せてくれるイーロン・マスクのような起業家がたくさん出てきて欲しいと願っている。

連載:スタートアップのすゝめ
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文=村瀬 功

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