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スタートアップのすゝめ


ちなみに、テスラのAI画像認識は、他社に圧倒的に差をつけていると言われている。せいぜい何100台というレベルでテスト車を走らせている他社と違い、テスラは既に何10万台もの車が実際に世界中を走り回っており、この数が1日に1000台以上のペースで増え続けているので、使えるデータの質も量も他社を圧倒している。

さらに、テスラはこの増え続ける膨大な量のデータを効率的に学習させるためのスーパーコンピュータも自前で開発中だ。これによって、車で撮影されたビデオから効率的にエッジケースのデータを取得し、学習させ、それをまた車にすぐにプッシュするという改善のサイクルを、さらに加速させることができる。

GAFAのようなテクノロジーの巨大企業が誕生した背景には、こうしたデータの「複利」の積み上げによる競争力の強化サイクルがあるのだが、テスラもまさにこれを実践している企業だと言える。

あるインタビューでイーロン・マスクが、「いまテスラ車を買うというのは、これから価値が上がるものを買っているのだ。これまでの車のように買った瞬間が一番価値が高くて、その後は価値が下がっていくものとはまったく違う」というような趣旨のことを言っていた。

スマホにアプリをインストールすることで新しいことができるようになるのと同じで、車のソフトウェアをアップデートすることで、どんどん新しいことができるようになり、価値も上がるというのだ。

ロボタクシーも、ソフトウェアが実用に耐えうるレベルに達し、各国での規制をクリアできた瞬間に、スイッチを入れるだけでサービスが開始できてしまうことだろう。

しかもテスラがこのサービスを始めるのに、ウーバーとリフトのようなドライバーの争奪戦を繰り広げたり、ドライバーを正規雇用と見なすかどうかという余計なことを考えたりしなくていい。ほぼゼロマージナルコストで、何10万台ものロボタクシーが走り回るビジネスができてしまうわけだ。

もはや自動車会社という括りでは語れない


こうした自動運転の世界が実現すると、空間としての車の役割も変わってくる。イーロン・マスクは、その役割とは「エンターテインメント」と「プロダクティビティ」だと言っている。車に乗っている間に仕事をする、テレビを見る、ゲームをする。こうした世界を実現するため、すでに仕込みも始まっている。

今年発売される新しいモデルには、PS5に匹敵するほどのグラフィック性能のあるハードウェアが載ってくるらしい。例えばテスラ用のレーシングゲームがあったらどんなだろうと想像してみよう。アクセル、ブレーキ、ハンドル全て本物が揃っていて、完璧なサラウンドサウンド、大音響でも他の人に迷惑をかけない空間が車内にできてしまうのだ。こうなってくると駐車している間でも楽しめる車になるのかもしれない。

仕事空間としてはどうだろう? コロナ禍で家庭内に静かに仕事ができる環境を確保するのが難しいいま、完璧に空調が効いていて誰にも邪魔されない空間が簡単に車内に実現できる。自動運転でガレージに留まっている必要もないから、気分に応じて車が動いていてくれていてもいいわけだ。きっと景色のいい場所をテスラが知っていて、任せればそこに連れて行ってくれたりするかもしれない。

文=村瀬 功

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