そしてもうひとつが、自分の型をつくったうえで、それにこだわり続けたことだと言います。
「あきらめずに自分を変えないで頑張っていると、ちゃんと誰かが見てくれているもんなんです。自分を忘れ、余計な計算をして横にそれたりするとダメになる。あくまで自分のラインを貫くことがすごく大事なんです」
必要とされることに意味がある
鶴瓶さんは「美意の按配」という故事が好きだと言われていました。「起こったことすべてに意味がある」という意味だそうです。だから、思うように自然に動けばいい。余計なことは考えない。最初はイヤに思えることも必ずどこかでいいことにつながるのだそうです。
うまくいかないのは、ちゃんとチャンスを与えてもらっていないからだ、と考える人は少なくありません。しかし、そうではないと鶴瓶さんは言います。
「チャンスが来る前に、普段からきっちり準備をしておかないといけないんです。小さなチャンスから、自分の型が出せるようにしておかないといけない。そうでないと、スポットが当たったときに間に合わないんです。準備ができてるから、スポットが当たるチャンスをつかむことができる」
準備もせず、ただ不満を持ったり、将来に不安を抱いたり、まわりのことばかり気にしている。そういう人が多いというのです。
「特に若い人に言っておきたいのは、いまを喜び、大事にしてほしいということです。いまを飛ばして、先に起こる結果ばっかり気にし過ぎたり、世の中の価値観で見過ぎていたりしたらダメになるから」
好きな仕事ではない、やりたいことではない、どうして自分が……。そんな思いで目の前の仕事に取り組んだところで、うまくいくはずがありません。まずは、目の前の「いま」に向き合ってみる。
これが自分の仕事だと思ったら、まずは必死でやってみる。そこで自分の型をつくって、自分の世界をつくる。その中での中心人物を目指すのです。
「別にゴールデンタイムみたいな仕事だけが偉いんやないんです。小さな世界でも、そこで必要とされることに意味がある。そこから始まっていくんですよ」
いきなり、とんでもないチャンスが降ってくるはずがありません。また、とんでもないチャンスを手に入れるだけが人生というわけでもない。いますぐに手に入れられなかったからといって、人生が終わるわけでもない。人生は長いのです。
「神様から『お前もなんかせい』と言われて、人は生まれてきてるんやと思う。だから、自分を信じるべきやと僕は思ってます。焦らんでいいんです。種をまいて、花が咲くのを待つ。もちろん、種もまかんのに花は咲かんし、水やりもちゃんと必要になりますよ。大事なことは上を目指そうという気持ちを常に持ち続けること。いつも向上しようとしている人は、誰から見ても素敵なものなんです」
これほどの売れっ子なのに、鶴瓶さんは常に新しいチャレンジを続けています。取材では、こうも語られていました。
「人間はいずれ死ぬから。志半ばでも、持っていかれる。簡単に死んでしまう。だから、やり続けて死にたい」
まさに鶴瓶さんが向き合っているのは、いまそのものなのです。
連載:上阪徹の名言百出
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