そのパンデミックに翻弄されてきた世界では、「信ぜよ、されど確認せよ」という古い格言が、ますます的を射た言葉になりつつある。
新型コロナウイルスのワクチン接種を開始した各国は、国境を開放し、経済活動を再開させ、国民が「ニューノーマル(新たな常態)」に戻ることをなんとか可能にしたいと切望している。
そのため陰性の検査結果とワクチン接種を証明することは、今後さらに重要な枠組みになっていくと考えられる。接種を受けた人に「ワクチンパスポート」を発行する、またはその他の何らかの形で証明書を発行するプロセスの導入を進める動きが勢いを増しているのは、そのためだ。
英国はこれまで、こうした議論の最前線に立ってきた。実際に同国政府は数カ月以内に、ワクチン接種証明書についての何らかの決断を下すとみられている。欧州連合(EU)域内の各国もまた、接種済みであることを証明のためのプロセスの導入を検討中だ。
デンマークとスウェーデンは、ワクチンパスポートの発行を準備。ドイツとフランスは、ワクチン接種を受けることができていない人にも公平な形でこのプロセスを進める方法について、慎重に検討を進めている。
すでに運行上の安全対策としてこうした方法を取り入れしてきた航空会社のほか、クルーズラインや大学、スタジアムなど、大人数が集まる可能性があるその他の施設の運営会社や民間団体も、同様の方法を検討していくだろう。
技術的には可能
ワクチン接種を受けた人を対象とするこうした認証プロセスを導入することは、技術的には可能なことだ。たとえば、非営利団体「コモンズプロジェクト(The Commons Project)」は世界経済フォーラムと協力して、「コモンパス(CommonPass)」プラットフォームの開発を進めている。
コモンパスは、「個人の健康状態に関する情報を非公開に保つと同時に外国への旅行や国境を越えた移動を円滑にするため、新型コロナウイルスに関する個人の状況を記録可能にするための標準化されたグローバルモデルを開発し、運用を開始する」としている。
公平公正なシステムにすることが重要
各国にとって、自国以外で旅行者が受けたとするPCR検査の結果やワクチン接種に関する情報は、信頼できるものでなくてはならない。それは、航空会社、空港をはじめ、旅行業界に関連する人たちにとっても同じことだ。
こうした取り組みのもう一つの例は、米クリア(CLEAR)の個人の目や顔を「タッチレスID(身分証明書)」にする技術を用いたものだ。この技術を使えば、個人を素早く、安全に特定することができ、物理的世界とデジタル世界の間をフリクションレスで行き来することが可能になる。
同社は運用している「ヘルスパス(Health Pass)」プラットフォームを「個人の身分証明やワクチン接種に関する証明書を確認し、より安全な環境を作り出すための信頼に足るデジタルヘルスパスポート」として利用することで、ワクチン接種に関する確認プロセスを巡る問題に取り組もうとしている。
個人のPCR検査の結果とワクチン接種に関する状況を追跡することは、まさに今後取り組むべき重要な問題になるだろう。また、最終的にすべての人にとって公平で公正なシステムを構築するため、規制当局や政府関係者、民間企業・団体が忘れてはならないのは、医療へのアクセスとケアにおける格差の問題に対処することだ。