コロナ禍の昨シーズン、NBAやMLBでは試合数が削減された分、選手の報酬も減額となったのだが、WNBAはレギュラーシーズンが36試合から22試合に減ったにも関わらず、選手には100%の報酬が支払われた。選手の子どもやシッターにも食事や宿泊施設を提供し、母親としてプレーする女性アスリートへのサポートにも力を入れた。
WNBA選手会長としてCBA締結に大きく貢献したネカ・ オグウマイク選手(ロサンゼルス・スパークス)は、「選手たちはリーグに対し、プロフェッショナルとして働く女性や母親、健康、未来に投資し、公平な労働環境を作っていくことを望んでいる」とコメントし、女性が生き生きと自分の人生を歩んでいける環境作りの重要性を口にした。
ネカ・ オグウマイク選手(Photo by Leon Bennett/WireImage)
私が勤務していたロサンゼルス・スパークスのカルチャーからも、WNBAが多様性を尊重し、女性の活躍推進を実践していることを肌で実感することができた。
同球団のビジネスオペレーションの最高責任者は米国人女性で、当時の上司であった球団副代表も同じく米国人女性である。私は球団で唯一の外国人留学生で、スポーツビジネスの経験もなかったのだが、上司は人種や立場、経験、性別などに一切の偏見を持たずに「どんどんイニチアチブをとっていきなさい」と鼓舞してくれた。
男女のリーグ収入や報酬金額の差は単純比較できるものではないかもしれない。しかし、スポーツの更なる発展のためには、存在する男女格差の現実を受け止め、リーグと選手が一丸となって取り組むことが重要だ。
女子スポーツならではの課題や使命を理解し、問題解決に本気で挑むWNBAの改革には学ぶものが多い。
大塚彩花◎1993年栃木県生まれ。筑波大学大学院人間総合科学研究科(コーチング学)卒、保健体育科教師を経て、女性スポーツの地位向上を目指しUCLAに留学。トランスインサイトでのリサーチアシスタントの傍ら、WNBAロサンゼルス・スパークス勤務を経て、現在はNFLロサンゼルス・チャージャーズでパートナーシップの法人営業として働く。