NFLやMLB、MLSも超えるダイバーシティNo.1の評価を得たWNBAは、男女格差是正のために主に2つの改革を2019年と2020年に実施した。
1. デロイトのCEOをコミッショナーにヘッドハント
WNBAコミッショナーのキャシー・エンジェルバート(Photo by Craig Barritt/Getty Images for Tory Burch Foundation)
WNBAは2019年、当時のデロイトのCEOキャシー・エンジェルバートをWNBAコミッショナーにヘッドハンドした。2人の子をもつエンジェルバートは2015年からデロイトのCEOを務め、組織全体のウェルビーイングやダイバーシティ&インクルージョンにも力を入れてきた。WNBAは、彼女の実績や収益増加の知識、マネジメントスキル等を総合的に評価し、リーグ全体の社会的発展を期待してこの決断に踏み切った。
結果、2020年同リーグの女性職員の割合は全体の61%(2019年の49%から12%増)を占め、また全球団のうち約85%で女性職員がCXOに就いているという成果もあげた。
「ガバナンス体制から読み解く「森発言」」にもあるように、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会元会長の森喜朗氏の女性蔑視発言が大きな問題となったのは記憶に新しいだろう。あまりオリンピックについて話題に上らない米国でも、この話はあらゆるスポーツニュースで取り上げられていたほどだ。
TIDESがリオデジャネイロオリンピックが開催された2016年に発行した女性のリーダーシップポジションに関するレポートでは、国際競技連盟(総合)に付けられた評価は[F]、IOC(国際オリンピック委員会)でさえ[D+]だった。USOC(米国オリンピック委員会、現・USOPC)*は[B−]評価だった。
WNBAの女性活躍推進は、IOCや米国の他のスポーツリーグよりもはるかに先を行っている。
森喜朗氏(Photo by Carl Court/Getty Images)
2. 新労使協定の締結 ママアスリートへのサポートにも注力
選手の労働環境改善に目を移すと、特筆すべきは何といっても2020年1月にWNBAと選手会の間で締結に至った新労使協定(CBA)である。CBA締結により、選手の最大報酬金額は11万7500ドルから21万5000ドル(約83%増)への増額を実現した。
さらに福利厚生の面でも、新たに以下の内容が追加された。
・有給での産休を認め、5000ドルの育児手当を支給する
・選手は代理出産・卵子凍結・不妊治療の際に、最大6万ドルの補助金を受けることができる
・試合会場となるアリーナ内に、授乳スペースを設置する