NBAの女子版・WNBAはリーグ全体で約6000万ドル(約66億円)を稼ぐ米国女子プロスポーツリーグである。12球団が所属し、人気球団では1試合あたりの観客動員数が1万人を超える。NBA同様、選手会が存在し、年間の試合数やリーグ収入の選手への配分比率、選手の報酬、福利厚生などについてリーグと選手が協議を重ねながら運営されている。
リーグ収入、観客動員数ともに女子スポーツの中ではトップに位置するWNBAだが、NBAと比較するとその差は一目瞭然である。平均年俸を見ても、NBA選手はWNBA選手の90倍近い。
【データ(2019年)】NBA:WNBA
【リーグ全体収入】$7.4 billion(約8100億円):$60 million(約66億円)
【選手の平均年俸】$6.4 million(約7億円):$71635(約780万円)
【選手の最高年俸金額】$40 million(約44億円):$11万3500(約1240万円)
【平均観客動員数】1万8000人:6768人
出所:wsn.com
また、上記にはないが、2020-21年シーズンのNBA選手の最低賃金89万8000ドル(約9800万円)は、2020年WNBA選手の最高報酬金額21万5000ドル(約2350万円)の4倍以上というデータも出ている。
これほどの格差を目の当たりにして、WNBAはどのような改革に取り組んだのだろうか。
WNBAのレジェンド、スー・バード選手(Photo by Herve Bellenger/Icon Sport via Getty Images)
WNBAが行った2つの改革
本題に入る前に、米国スポーツリーグのダイバーシティを評価しているThe Institute for Diversity and Ethics in Sport(TIDES)について触れておく。
TIDESはセントラルフロリダ大学スポーツビジネスマネジメント学部に設置された調査機関であり、WNBA、NBA、MLB、NFL、MLS(メジャーリーグサッカー)といったプロリーグや大学スポーツを対象として、雇用のダイバーシティを人種・性別の観点から評価するレポート “The Racial and Gender Report Card” を公開している。
各リーグのダイバーシティをA+からF(=Failure:落第)ランクで評価しており、2020年にはWNBAのみが唯一、人種/性別/総合の全3項目において最高評価[A+]を獲得している。
▶︎2020 Racial and Gender Report Card
【リーグ】総合評価/人種/性別【WNBA】A+/A+/A+
【NBA】 A−/A+/B
【MLB】 B /B+/C
【NFL】 B−/B+/C
【MLS】 B /A /C−