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ポスト・コロナのニューヨークから


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「租税貨幣論」によれば、「通貨の発行」は「徴税権」と表裏一体である。例えば、アメリカ国家が「ドルで税を徴収しますよ」と強制できたから、国民は納税するために必死で働いてドルを手元に集めなければならなくなり、その結果ドルには国家の裏付けのある通貨、法定通貨としての価値が出てくる。

つまり、納税しなくてはいけないから、政府が発行する紙幣や硬貨などの単なる紙や金属を、価値あるものとして、労働の対価や投資などで集めているということである。

その成り立ちからして、国家の通貨発行権と徴税権が一体となった中央管理システムと、徴税権のことなど考えられてはいない仮想通貨とでは、当然相容れない。

通貨安が起こるように、ビットコインの価値が下がれば、会社の資産も時価では目減りする。すでにビットコインで受け取り、あるいは現金をビットコインにして持っているテスラのような会社は、総資産に与える影響が株価に反映されてくる。

1971年8月15日に、突然、アメリカは金本位制を停止した。戦後のIMFを基軸としたブレント・ウッズ体制には終止符が打たれ、市場はニクソンショックに襲われた。ドルを金で裏付け続けられなくなり、管理通貨制度に移行せざると得なくなったのだ。

1929年の大恐慌では、各国に金本位制があったため、経済対策にも足枷となった。もっとも当時は大胆な金融政策が有効だとも思われてはいなかったのだが。

1971年に金本位制を停止したことが逆に幸いして、2008年のリーマン・ショックの時にも、昨年からのコロナ禍においても、金の裏付けが必要ないために、アメリカ政府がドルを刷って現金支給ができるようになったが、政府の債務が増えただけだ。

つまりドルを刷って金融支援政策を打ち、経済が失血しかかったところに現金支給で「輸血」することで、早期回復に向けて経済の落ち込みを支えたわけだ。バイデン政権になり追加経済刺激策法案が下院を通過し、上院に送られたところである。

このようなMMT理論(現代貨幣理論)が図らずも実現してしまった世界的な金融緩和政策で、世界の債務残高は、リーマン・ショック時をすでに越え281兆5000億ドル(約2京9800兆円)、対GDP比でも355%(2019年は320%)となった。2018年の時点ではまだ180兆ドル(約1京9000兆円)だったので、この数字は単なる通過点にしか見えない。

設計上2100万ビットコインが上限とされているビットコインが、法定通貨のように金融緩和政策にどう使えるかは、法的にも、システム的にも未知数である。

文=高橋愛一郎

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