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ポスト・コロナのニューヨークから


とはいえ、以前起きたマウントゴックス事件のように、ネットワークに侵入され、サーバーから消えてしまう暗号通貨の脆さも付きまとう。

サンフランシスコのプログラマーは、2億2000万ドル分のビットコインを持っていたが、パスワードを紛失し、アクセスできず、換金もできないままになった。そうなっても、通常の決済システムにいる中央の管理者が存在しないため、救済措置を行う主体もない。

間違ってビットコインを入れていたハードディスクを捨ててしまった事件や、72億円相当が支払い不明になったハードディスクの発掘許可を地元の自治体に申請したイギリスのケースなどもある。

フェイスブックが発行すると言われているデジタル暗号通貨の「ディエム(リブラから改称、ラテン語でdayの意味)」には、各国政府から圧力がかかっている。

ディエムを各国のフェイスブックのユーザーが一斉に使い出すと、簡単に国家の垣根をなぎ倒したようなグローバルな仮想通貨となり、国家の規制や手の届かない一企業が発行するブロックチェーンのなかで決済がされてしまうことになるからだ。

ディエムは、スイスにある「リブラ協会」という国家と同じような管理者がいる「集中管理型=ハブ型」のブロックチェーンである。それだけに、国家の金融システムの維持や金融政策も効かなくなり、国家が金融システムの安定化もできなくなってしまうことが懸念されている。ディエムは、法定通貨と連動させて価格を安定させるところが、ビットコインとは異なると言われている。

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フェイスブックによる暗号通貨「ディエム(元リブラ)」は国家の金融システムを脅かすと警戒されている

前回のコラムでは、ロビンフッダーの動きを「投資の民主化」とも表現したが、今度はフェイスブックという一企業が、銀行口座を持たない世界の人口の31%にあたる17億人に、国際送金も素早くできて低手数料(2018年の時点)の「民主化された」金融インフラを提供しようというのである。これは、国家から通貨発行権と金融の管理を奪いかねない構想であると言える。

現在、通貨を発行している国家は、中央に通貨の発行や、発行量の管理などをする組織があるハブ型である。同じハブ型で、しかも通貨をネットワーク上で発行し、決済運用が実現されたら、国家としては、金融をコントロールするパワーもなくなり、立つ瀬がなくなるということになる。

アメリカ議会からは、スイスにある「リブラ協会」に加盟申請した大手の会社に対して、加盟を真剣に考慮するようにと強い口調で警告するレターが出された。

そのなかでは「個人情報も十分に管理できないフェイスブックが、金融サービスをすることには疑問があり、金融システムとしても安全性に疑問がある。アメリカの金融政策や法定通貨であるドルを驚かす可能性がある」などの懸念材料が示されている。そのため、加盟申請した大手の会社から脱退の動きが相次いだ。

アメリカでは、独占禁止法のもとGAFAを解体する動きのなかで、すでに違う方面からもフェイスブックの力を削ぐべく圧力が掛かっている。

文=高橋愛一郎

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