ビジネス

2021.03.12 08:30

派遣社員から巨大企業グループ最年少執行役員に。勝因は『仕事の主語』にあり?


仕事の「主語」が変わると見える世界も変わる


僕は、海外拠点も含めたシナジーあるグループ間の情報連携やITの最適化の取り組みに邁進した。忙しい日々は続き、体調不良が消えることはなかった。

しばらく後、「日々、仕事の難易度が上がっていくね」と、一緒にプロジェクトを進めている仲間と会話をした時に僕は思った。「あれ? 今日は体調が良い!」。

しかも、そんな日が続いている気がする。なぜ、体調が良くなったのかといえば、孤独ではなくなったからだ。それは、すぐに自覚できた。

これまで、仕事について考える時、「僕の仕事」という考え方をしていた。つまり、仕事とは、〝僕が、どんな提案をするのか?〟であり、〝僕がプレゼンをする〟など、主語が英語で言うところのIで始まるものだと思っていた。実際、ある程度の立場になるまでは、自分一人でPCに向かって資料をまとめるなど、主語がIの仕事がメインになるのは仕方ない。

しかし、グループのITインフラを統一するような大きな仕事をやる場合、主語がWEにならないと、全く物事が前に進まなくなる。仮に、世界の様々な地域の担当者に、僕が一人ずつコンタクトを取っていたのでは意思決定が遅すぎてしまう。そんなことをしていたら、ITの進化のスピードに追いつかず最新機材を導入したつもりが、実際に導入する頃には、1世代前のシステムになってしまうだろう。

「僕の仕事」から、「僕らの仕事」になると、全く見える景色が違ってくる。目の前にある小さな一つひとつの目標を達成した時に、「二宮さん、やりましたね」とチームのメンバーと達成感の共有ができる。それだけで気分が楽になる。

一人で仕事をしている時は、何かの目標を達成しても「ギリギリなんとかできたけど、これから体力はもつのか?」などと、内向きな思考に満たされてしまいがちだった。しかし、チームでの仕事がメインとなると、気持ちが自然に外に向くのだ。

また、体調が悪い様子、メンタルが弱っている様子の人がいると、チーム全体の雰囲気が悪くなる。だから一人の場合は、ずっと仕事をしていないと不安になるような感覚を持っていたが、チームで仕事をするようになると、「休むのも仕事」という感覚が自然に芽生える。これが、「チームを回す」というステージの仕事のやり方だ。



二宮英樹(にのみや・ひでき)◎1979年徳島県生まれ。高校卒業後、ミュージシャンを目指して米国に渡るが挫折。2003年に帰国後、大塚製薬株式会社に派遣のヘルプデスクとして入社。上海万博出展に携わるほか、グローバルIT組織構築をグローバルリーダーとして推進。大塚倉庫株式会社執行役員IT担当を経て独立。株式会社オリエント代表取締役、情報セキュリティ戦略構築、組織づくり支援、教育等、各種コンサルティングを提供。特に欧米の高度セキュリティ・ソフトウェア開発の人材ネットワークを構築、国内外の企業に情報セキュリティ関連サービスを提供。

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