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2021.03.03

危機こそ好機。視点のもちかたで「創造性」は育てられる

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対話で磨いた「視点」が武器に


「Emergent Futures」を作るに当たって、IDEOTokyoはいくつかの点に気をつけた。一つは、未来を予測するのではなく、顧客と一緒に“視点”を設けて未来を模索する、というもの。それと誰もが活用でき、自分に合うものを「Pick and Choose(好きなものを選んで)」できるようにした。

そして、何よりも「対話」だ。レポートを発表した後、ウェビナーなどで行った顧客との議論を通じて仕事のヒントを多数得たという。例えばあるゲストの「これからのビジネスパーソンには、『スペシャリストのスキルセット、ゼネラリストのマインドセット』が必要」という意見にシーガーも同意し、「開かれたマインドセット」をもつことの重要性を訴える。

では、どうすれば「開かれたマインドセット」を育み、創造性豊かな職場を築けるのだろうか。「Emergent Futures」を通じた対話で得た知見をもとに、野々村は次の3点を提案する。

① よい意味でのミーハー感をもつ
② あるべき姿よりも「ありたい姿」を大切に
③ 自らの視点のもちかたを多様化する
 
一般的に業務に対する熟練度が上がると、負の側面として、人は他の領域に対して慎重か、懐疑的になりがちだ。だからこそ、意識的に「肯定力」をもつ必要がある。次に、自分や自社の理想像を追求すること。過去よりも未来を希求する姿勢が柔軟な発想を呼び込むのだ。

そして最も大事なのが、独りよがりにならないためにも、視点を多様化すること。本来、IDEO Tokyoでは「色々な人を見る」ことで、視点を増やす。それをコロナ禍では、「色々な人が見る」ことで担保した。

「人との話は刺激になるし、楽しい。クリエイティビティの観点からも本質的なのではないか」と、野々村は話す。他者との対話を通じて視点を磨く。原点に戻ることが、創造性を育む一歩になる。


トラビス・スコット



IDEO Tokyo環境デザイナーのコーリー・シーガーが注目するのが、米ミュージシャンのトラビス・スコット(28)だ。若年層を中心に、世界的な人気を誇るスコットは、ファストフードチェーン「マクドナルド」や、世界最大級の酒類メーカー「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」と、メニューづくりや商品開発で組むなど、スポンサーの枠を超えてビジネスに影響力を発揮している。2020年4月には、オンラインゲーム「Fortnite(フォートナイト)」上でライブを行って大きな話題を呼んだ。
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文=井関庸介 / フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.080 2021年4月号(2021/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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