同社は、ミスター・ポテトヘッドの商品名から「ミスター」を削除することで、「ポテトヘッドの世界で誰もが歓迎されていると感じる」ようにすると発表した。
これまでミスター・ポテトヘッドのアイデンティティーを理由として購入をためらっていた人がいたかどうかは私には分からないが、改名が文化戦争の格好の火種となることは確かだ。一部の人の思い込みとは裏腹に、性的少数者(LGBT)の活動家らには、ポテトヘッドから「ミスター」を削除することよりもよっぽど大きな心配事がある。
ツイッターでは予想通り、今回の発表をあざ笑う人も出た。(実際、今回の発表の仕方は笑いを誘うものだった)
ひねくれた考えと言われるかもしれないが、今の世の中、「ジェンダー」という言葉を使っただけで大げさな議論が巻き起こることは、企業側も十分理解しているはずだ。伝統的なジェンダー規範に対する反発が生じている今、ジェンダーの話題は多くの場合、怒りや論争を生む。
LGBT活動家たちはおかしな思想を持って言葉狩りに躍起になっていると主張したい人にとっては、「ミスター・ポテトヘッドがノンバイナリー(男女の二元論に当てはまらない人)に変えられた」は絶好の話題となる。だが実際には、ミスター・ポテトヘッドは消えたわけではない。ミセス・ポテトヘッドも健在だ。
ハズブロはポテトヘッドから性別を排除したわけではなく、ミスター・ポテトヘッドとミセス・ポテトヘッドは今後も販売を続ける。ただ、箱に記載されるブランド名が「ポテトヘッド」になるだけだ。
本当にそれだけの話だ。当事者への思いやりと称して行われたシンプルな名称変更が、文化戦争の火種となり、メディアなどが飛びついて騒ぎ立て、ツイッターで物笑いの種となった。
これがLGBTの人々の生活をより安全にすることはないが、ポテトヘッドのブランドにとっては新たな話題作りとなる。実際、今回の発表は、性的少数者への差別を禁じる「平等法」法案の米下院通過とほぼ同じという絶妙なタイミングで行われた。
今回の名称変更をめぐる意見はさまざまだったとしても、次のことは誰もが同意できるだろう。ハズブロのマーケティング部は今回、昇給に値する働きをした。