朝日新聞外交専門記者

Photo by Kiyoshi Ota/Bloomberg/Pool/Anadolu Agency via Getty Images

韓国のテレビではよく、プロ野球の「好プレー珍プレー」のように「国会場外乱闘特集」というコーナーが組まれる。昔は報道番組の箸休めのように使われていたが、このごろはユーチューブでも盛んに登場する。

最近、話題を呼んだのが2020年10月に行われた国会国防委員会で繰り広げられた、委員長と野党議員とのやり取りだった。最初は、質問時間の途中でマイクの音声が切れたことを巡って、「途中でマイクの音声を切った。進行が間違っている。謝れ」(野党議員)、「いや、十分に時間をあげた」(委員長)というやり取りでスタート。3分ほどにわたって、水掛け論をしているうちに、共にぶち切れた。野党議員が「タンシン(あんた)が、途中で切った」と言うと、委員長は「タンシン!」(なんで委員長と呼ばないんだ、という意味)と激高し、大荒れに。「パンマル(ため口)使うんじゃない」などと、全く議論と関係のない口げんかに発展した。このユーチューブは40万回近く再生された。

韓国では、国会議員は閣僚と同じ扱いになっている。官僚が国会議員に説明に赴くときは、長官か次官級が原則。そうはいっても、役人も忙しいので、局長か、場合によっては課長がご説明に赴くことが多いが、その場合、政治家本人はめったに出てこずに、補佐官が対応する。課長補佐級が相手をすることも多い日本とは随分違っていて、要するにこのやり取りで国防委員長がキレたのは、プライドを傷つけられたのが原因だった。

人間、キレるときの理由は様々だ。菅義偉首相も最近、「キレた態度」で天国と地獄を味わった。

「天国」は1月27日の参院予算委員会。立憲民主党の蓮舫代表代行から新型コロナウィルス問題で激しく問い詰められた菅首相は、思わず「少々失礼じゃないでしょうか」と反論。自分の思いをぶちまけた。これについて、SNSでは菅氏の答弁を支持する声が広がり、菅氏自身、大いに気を良くしたという。蓮舫議員の攻め方が一本調子だったことと合わせ、「新型コロナ問題で一生懸命やっているのに、なぜわかってくれないのか」というキレた原因に共感が集まったのが原因だろう。

「地獄」は、2月26日に行われた、「ぶら下がり」形式での取材。菅首相の長男が勤める放送関連会社「東北新社」から「7万円接待」を受けた山田真貴子広報官(3月1日付で辞職)を隠すために記者会見をやらなかったのではないかと詰め寄る記者団に、「必要なことは答えている」「同じような質問ばかり」などとキレた。この場合、世間が非難囂々になったのは、菅首相がキレた姿が「追及から逃れようとしている往生際の悪い態度」に映ったからだろう。

与党幹部によれば、首相官邸は総務省接待問題が、安倍政権当時のモリカケ(森友学園・加計学園)問題のようになることを懸念。事態の早期収拾を図るために、接待の実態を早々に明らかにすると同時に、総務省幹部に責任を取らせることにしたという。菅首相の山田広報官に対する処遇は、この方針に反するともいえ、世間の怒りを買うのは予想できたはずだ。そこでキレたら、なお始末が悪い。

ところで、キレる人より始末が悪い連中がいる。

文=牧野愛博

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