パリ協定、失敗なら数百の空港が消滅危機

スワンナプーム国際空港(Getty Images)

ジョー・バイデン米大統領が表明した米国のパリ協定復帰は、空の旅が好きな人や航空業界関係者にとっては朗報だ。英国の研究チームが科学誌クライメート・リスク・マネジメントに最近発表した論文では、地球の気温が2度上昇すると、航空業界には取り返しがつかない影響が出るとの見通しが示された。

地球温暖化は海面上昇を引き起こし、各地の沿岸部に影響をもたらしている。米ウィリアム・アンド・メアリー大学バージニア海洋科学研究所による最新の「米国海面上昇報告書(U.S. Sea-Level Report Cards)」では、米沿岸部の海面は2050年までに0.5メートル上昇すると予測している。

英ニューカッスル大学工学部のリチャード・ドーソン教授とアーロン・エスディアン教授からなる研究チームは、世界1万4000カ所以上の空港が抱える海面上昇によるリスクを、立地や現在・今後の海面水位での高潮の危険性に基づき順位付けした。チームはまた、海面上昇による洪水の可能性や、洪水対策がもたらすフライトへの影響もあわせて分析した。

その結果、世界の270近くの空港が現在、海面上昇による洪水の危機にさらされていることが分かった。パリ協定が回避を目指している産業革命前比で2度の気温上昇が現実のものとなれば、100空港が海面下に入り、364空港に洪水の恐れが生じる。また、2100年までに危機にさらされる空港の数は572になる。

研究チームは、空港が海面上昇の影響を受けやすい理由として、多くの都市は海辺にあり、空港は低地に建設されていることが多いことを挙げている。これは、低地には離着陸時の衝突リスクが少なく空港建設に適した平たんで広大な土地が見つかりやすいことが理由だ。結果として、多くの空港が、沿岸の湿地や氾濫原を埋め立てて建設されている。

論文によると、気候変動によるリスクが高い上位20空港はほぼ全て、東南アジアと東アジアに位置している。1位はタイの首都バンコクのスワンナプーム国際空港、2位は中国・温州の温州龍湾国際空港だ。トップ20に入った空港が最も多かった国は中国で、上海の上海虹橋国際空港(SHA)も入っている。(編集注:日本の空港は上位20位には入っていない)
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編集=遠藤宗生

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