その転換点となったのが、起業時に引き受けた法務部のない企業での週2日の法務業務の仕事だった。初めての企業法務の仕事先で、「契約書のレビュー量の多さ」に圧倒されたという。そして、企業法務部や企業内弁護士の業務が、比較的定型的な契約書の見直し作業が多いことに気づく。「契約書チェックは定型的な仕事ですが、ミスをしないように注意を払い、時間が掛かるうえにストレスや責任も大きい。これを解決できるといいなと思ったのが、事業化のきっかけになっていますよね」と角田はいう。
AIが的確に文言の問題点や漏れをチェックしてくれる。
「契約書を自動で作る」という起業当初の見立てに確信を持つ。現場での実体験を事業計画に落とし込み、「契約書業務を快適にできるサービス」に集約させた事業の柱が定まった。2017年10月にエンジニアである現CTOの時武と出会い、契約書に特化したエディターの開発に着手。しかし、法務業務の実務に耐えうる品質まで至らなかった。そのため、事業を一旦白紙に戻す。当初から構想していた契約書レビューと条文検索の開発に事業の方向を転換し、2018年2月(正式入社は7月)にAIの研究開発を担う現CROの舟木が参画したことで、AIを搭載したプロダクトβ版が同年9月に完成。2019年4月、正式版をリリースしたのを契機に、会社は飛躍的に発展する。
声を拾いあげることで、現場の満足度を追求
導入企業数(2月時点)は、1年半で250社から700社に拡大。4割弱が上場企業で、残り4割強が中堅企業以上、2割強が法律事務所をクライアントに持つ。短期間に急成長へ繋がっていったのは、一つには常にクライアントの声を汲み上げて、プロダクトを進化させていくLegalForceの柔軟性にある。
過去の契約書を参考にできない新しい領域の案件が日々舞い込み対処に苦労している企業の法務から、「参照する雛形が必要だ」という声が上がる。メイン機能の「契約書自動レビュー」には、頻出する業務委託契約、秘密保持契約、取引基本契約を中心した40類型の雛形だけで、拡大する事業領域にこれでは不十分だ。そこで、雛形の図書館ともいえる「Legal Forceひな形」を実装して、雛形を約300類型・440点以上(英文含む)まで拡充し、使い勝手を良くした。雛形はすべて、日米弁護士有資格者チームによる法務開発部が常に法的な正しさをチェックし、法改正で複雑化していく最新の法令に準拠した形にアップデートしている。法務で法改正のたびに紙の法令集を用意する必要も、これでなくなった。
リーガルフォースが提供するオウンドメディア「契約ウォッチ」。常に最新の法務情報が「無料」で確認できる。
また、社内の過去の契約情報がファイルサーバーや各自のメールに無造作に管理されているため、探すまでの工程がかかるという企業の声をヒントに、「社内ライブラリ」機能も追加した。過去に扱った類似契約書を企業独自のライブラリに蓄積し、キーワード入力で参照となるひな形や過去の契約書を提示する機能だ。このシステムに従来のキーワードを入れて条文を検索する機能を合わせて使えば、条文リサーチの時間が格段に圧縮できるうえに、条文の選択肢が増える。機能は、利用者の意見を基に常にバージョンアップされている。