ビジネス

2021.03.08

もう裏方という時代ではない。成功するアウトプットは併走する法務にあり

LegalForce 代表取締役CEO 角田望


法務は本来、経営と連携されるべき。それが「攻め」だ


クライアントの裾野を広げ、ここまで支持を掴んだのは、法務の課題となっている作業効率が改善されたことの証なのだろう。「契約関連業務が8、9割で他の業務に手が回らない」、「雑務に追われ、新規事業にスピード感を持って対処できない」「時間をかけて契約を何度見返しても漏れがある」など、どれも共通して作業の効率化が課題だった。

実際に、LegalForceを導入したことで、「新規契約のレビューに1件あたり1時間かかっていたのを30分短縮でき、月平均30時間削減が可能になった」という声が出ているという。法務が契約書の作成、企業ルールの策定などのルーティンに追われているという現状にメスを入れたLegalForceだが、法務業務の効率化をサポートする目的は、法務の「攻めの機能」を確保することにもあるという。

法務本来の役割は、経営の意思決定に関わり、法律の制定や改正に沿った具体的なソリューションを提案する「攻めの機能」にある。しかし、現状は、契約書レビューなど定型業務をこなす「守りの機能」が大部分を占める。新製品開発、新規市場への進出など新規事業に関わる契約が増えている中、スピード感を持って法務と経営が連携して対処しなければ、事業は成立しない。そのため守りの機能だけでなく、事業リスクの策定など攻めの機能、さらに攻めと守りの業務とのバランス、この部分が法務の次なる課題として顕在化している。法務のあるべき機能について、角田はこう言う。



「企業が新しい事業活動を行う、あるいは新しい取引先と取引するという過程で、必ず法的整理がされたうえで行われている。また、その過程で規制が変わっていく可能性もある。そうした場合、企業の法的リスクを回避するうえでも、法務の知見や経験、意思決定を経営判断に生かしていくべき必要性が益々高まっていくはず。そうした法的サポートに法務が時間を使えるようになる必要がある」。

さらに、法務の効率化を支援するサービスを通じて、企業法務の中核的な課題でもある、法務と経営の在り方について認識を深めていったという。企業が直面する「契約リスクをいかに制御するか」が今後の法務の課題になると考え、昨年5月、企業ミッション〈全ての契約リスクを制御可能にする〉へ刷新した。

2021年1月には、紙の契約書管理を自動化する「Marshall」の正式版もリリース。これにより契約業務においてLegalForceがカバーする範囲がまた広がった。「法規制は複雑化してきているので、人間の経験や知識のみをベースに処理できる量はもうそろそろ限界を迎えている。私たちがやるべきことは、情報や規制が複雑化していることを前提として、テクノロジーと法務の知見を使ってすべての契約リスクを可視化し、制御可能にしていくことです。それによって法務の生産性が高まり、事業がスムーズに実現し、最終的に社会の豊かさへとつながっていく。そのために私たちは貢献していきたい」-角田はLegalForceのミッションについて熱く語った。

法務「攻めの機能」へシフト ビジネス創出に向けて


国内のリーガルテックの市場規模は年々増加しており、2016年から2023年までの年平均成長率は9.8%で、2023年には2018年の228億から353億円に拡大すると予測されている(矢野経済研究所「リーガルテック国内市場規模推移と予測2019年」)。

今後2年間で法務のリーガルテック利用率が高まり、法務は「守りの機能」をリーガルテックに任せ「攻めの機能」へ重心をかけていき、本来のプロフェッショナルとしての役割に注力していく傾向が強まるということかもしれない。日本企業が、テクノロジーを積極的に活用し、法務を経営に生かす方向へシフトすれば、新たなビジネスの創出・グローバルビジネスの展開といったビジネス上の価値を高めることが可能になるのではないだろうか。

文=中沢弘子 編集=坂元耕二 写真=西川節子

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