マツダ初のEV「MX-30」は、初モノ満載で乗り手の評価を待っている

「初」のオンパレードで挑戦的な位置付けとなったマツダ「MX-30」


マツダはマツダらしいSUVを出すべきだと思う。だから、スリークで無駄のない、クーぺっぽい外観を高く評価する。「ドライバーの心の状態が整うクルマを目指した結果、あの形にたどり着いた」と、開発責任者の竹内が言うのを聞くと、なるほどと肯ける。

竹内は、「クルマが『オーナーの心にポジティブな作用をもたらす』ように、従来のライナップの系譜とは異なるデザインや、ドアを開けた瞬間に見える室内空間の造形、素材やディスプレイなど、それらすべてが心を整える方向のしつらえにしたのです」と語る。

内装も、革新的な素材を採用しモダンで新鮮だ。インパネはクリーンで上品なデザインになっており、モニターは2枚完備。内装で一番驚くのは、コルクの初採用だ。マツダは100年前に「東洋コルク工業」として設立されたけど、そのヘリテージに敬意を払って、センターコンソール周りにコルクをふんだんに使用している。フローティング・コンソールとの相性は良いけど、果たしてその耐久性はどうだろう。

運転席の写真

また、もう一つの特徴はリサイクルしたマテリアルの採用だ。ドアトリムのアッパー部に、原料の約20%にペットボトルから再利用した不織布を用いたリサイクルファブリックが採用されている。窓が空いている時に、雨に降られると、濡れるだろうと思ってマツダのデザイン部のスタッフに聞いてみたら、「水吐けが良いから問題にはならない」と言う。

さて、前輪駆動のパワートレーンだ。駆動モーターの最高出力は145PSで、最大トルクが270Nmと、いずれも目を見張るところはない。二次バッテリーの容量にしても35.5kWhはライバルと比較しても小さい。と言うことで、例えば、テスラ・モデルXのような爆発的な加速がない。どっちかと言うと、MX-30の加速は電気量をできる限り残す穏やかなセッティングになっている。パワー不足ではないけど、正直なところ、もう少しパンチが欲しい。

エンジン部の写真

でも、僕が納得したは、ハンドリング。1650kgと重いSUVなのに、コーナーではロールしない安定した姿勢を見せる。やはり、モーターやバッテリーがシャシーの低い位置になるので、フラット感を保とうとするおかげだ。また、ステアリングは軽いけど、フィードバックはしっかり伝わってくるので、ドライバーに安心感を与える。

慣れれば、回生ブレーキのおかげでワンペダルで運転できる。アクセルから足を離すと、回生ブレーキが働いて、まるで自分がブレーキを踏んでいるかのようにクルマを減速させる。同車には回生ブレーキを調整するパドルがついているけど、車を減速させる2段階よりも、もう1段階ついていた方がしっかりとワンペダルで運転できると考えた。

もう一つ。アクセルを踏むと、ドライバーを刺激するという人工的なエンジンっぽいサウンドが流れる。若いユーザーなら納得できる機能のようだけど、50代以上の人は「うむ」と頭をひねくる。

欧州でMX-30に対するもう一つのクエスチョンマークは、航続距離の短さ。日本では、一充電でWLTC値で256kmと言っているけど、欧州で伝えている航続距離は200kmだし、「リアルワールドでの体験からすると160kmぐらい」と同僚がいう。と言うことで、「電欠」を心配してヒヤヒヤするだろうと同僚は指摘した。

それでも、新鮮な走り、スタイリング、個性的な「初」満載を考えた場合、MX-30の真価が現れているのは、やはり EVだと思う。確かに、航続距離はライバルのMINI Eなどよりも少ないとしても、シティ・ユースとして使われるはずのMX-30にとって、このデザイン、この走り、この航続距離は十分だろうと僕は思う。また、276万円からの価格はかなりバリュー・フォー・マネーだろう。

文=ピーター・ライオン

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