マツダ初のEV「MX-30」は、初モノ満載で乗り手の評価を待っている

「初」のオンパレードで挑戦的な位置付けとなったマツダ「MX-30」

世界的にガソリンエンジン車が販売禁止になる2030年が近づいてくる中で、今年は、トヨタ、日産、スバルなどからそれぞれ初の電気自動車が導入されることになっている。そこで、今春のトップバッターとして、電動化では大きく遅れをとっているマツダがついに電気自動車を出した。

同社初の量産EV「MX-30」は、実は「初」という文字がテーマのようだ。

どういうことかと言うと、マツダ初のEV「MX-30」の開発主査を勤めるのは、マツダ初の女性チーフエンジニアの竹内都美子だし、SUV初の観音開きドアを採用している。さらに、内装での素材としてコルクが使われたのも初めてだし、PETボトルから作るドアパネルのカバーも初だ。

「初」の特徴が多いかもしれないけど、もう1つの「初」が潜んでいる。このMX-30は、実は日本には3仕様ある。昨年10月に登場したガソリン・ハイブリッドと、今年1月に発売されたEV仕様が話題になっているけど、2022年にロータリー仕様も加わる予定だ。その仕様は、「ロータリーエンジンを発電機として使用するマルチ電動化技術を採用したモデル」だとマツダは言う。エンジンが発電機の役割を持つ「レンジ・エキステンダー」という人もいる。

しかし、面白いことに、ガソリン・ハイブリッド仕様は日本市場でしか発売されない。昨年6月に欧州で先行発売となった「MX-30」は、EV仕様のみ。ということで、ヨーロッパ人から見ると、MX-30は完全なEVだ。もちろん、そのロータリーエンジンを発電機とする仕様も来年出ると期待されているだけに、今はハイブリッドは全く視野にない。日本以外では、MX-30といえばEV仕様のこと。だから、日本にいる僕は、EV仕様とハイブリッド仕様の両方を評価できる。

横から見たMX-30

共通に評価されているのは、デザインだ。MX-30は今までのCX-3やCX-5などのマツダのSUVとは違って、新しいスタイリングになっている。

このデザインは目に優しく格好良いとは思うけど、デザイン重視でSUVとしての通常の実用性が犠牲になっているところが賛否両論だ。このデザインの中で最も指摘される要素の一つは、20年前にRX-8に初採用された観音開きドアだ。欧州では、僕の同僚が「乗り降りしにくい」とか「学校で子供を下ろす時に、フロントドアを開けなければ、リアドアは開けらない」とか「観音開きドアのせいで後部席で圧迫感を感じる」などの辛口なコメントを残している。

観音開きのドア

でも、これらをポジティブに解釈する僕から見ると、観音開きドアはハイライトの一つだと思う。確かに乗り降りしにくいし、身長189cmの僕は圧迫感を感じるけど、やはり、これからSUVが多く登場してくる中で、個性をしっかりと守って、他にはない格好いい特徴を持つSUVが目立つだろう。毎日子どもを後部席に乗せなければならないなら購入に慎重になるだろうけど、たまにであればEV仕様は良い選択だと思う。
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文=ピーター・ライオン

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