欧州20カ国を対象とし、英医学誌ランセットの精神医学誌ランセット・サイカイアトリに掲載されたこの調査によると、重度の精神疾患を新型コロナウイルス感染症の高リスク疾患として認め、こうした病を抱える人が他の高リスク集団と一緒にワクチン接種を受けられるよう計画している国は、英国、ドイツ、オランダ、デンマークだけだった。
科学者によると、統合失調症や双極性障害など、重篤な精神疾患によるリスクは、ワクチンの優先接種対象となっている他の病気によるリスクと「同等かそれを上回ることさえある」ことを示す科学的証拠が増えている。
研究を共同で率いたベルギー・デュフェル大学精神科病院(UPC Duffel)のリビア・デ・ピカー教授は「最近の調査からは、精神疾患がある場合、新型コロナウイルス感染症の感染リスクは65%高まり、重篤な精神疾患患者の場合は死亡率が1.5~2倍になることが示されている」と述べた。
デ・ピカーは「こうした患者らは大半のワクチン接種計画で完全に見過ごされている。これを変える必要がある」と続けた。
研究者らや心の健康に関する権威ある欧州の団体は、精神疾患を抱える人をワクチン計画で優先するよう各国の医療・科学機関に求め、欧州連合(EU)にも連合全土に適用される基準を設けるよう要請した。
欧州神経精神薬理学会(ECNP)のギデ・ムース・クヌスン会長は、ウイルスの拡散を抑制するため「欧州規模での戦略」が必要だとし、「『科学に基づく』姿勢を取るならば、リスクにさらされているこうした患者が優先されるべきだ」と主張した。
深刻な精神疾患と新型コロナウイルス感染症の関連性を示す証拠は増えている。専門家らも指摘したように、根拠に基づいたワクチン接種方針にするにはこの点を考慮すべきだ。