ビジネス

2021.02.27

ネットフリックス共同創業者兼CEOが明かす「人の心を動かすチーム」の育て方

ネットフリックス共同創業者兼共同CEOのリード・ヘイスティングス


「方向転換には新たな投資が必要で、今年の利益率が低下するリスクもある。株価も下落するかもしれない。そんな状況で経営幹部はどう対応するだろうか」と、ヘイスティングスは自著の中で述べている。ボーナスが営業黒字と連動するハリウッドの経営陣とは異なり、ネットフリックスの幹部はリスクを取ることで給与面の打撃を受けることを恐れない、と彼は請け合う。

「企業文化」こそが最強の武器


パンデミックは、ネットフリックスの革新的な企業文化にも試練を課した。だがリモート環境での自律的な働き方は、ネットフリックス社員にとっては新たに身につける必要のないスキルだ。脚本家たちのためのバーチャル会議がネット上で開かれ、アニメーターたちはリモートで作業を進めるようになった。

それにヘイスティングスがこの10年間、海外展開に力を入れてきたことも奏功した。アイスランドや韓国など、流行がコントロールされた国では制作が比較的早期に再開されたからだ。しかもネットフリックスには、“運”を生み出す助けになる圧倒的なコンテンツの量とデータがある。



ヘイスティングスは、配信サービス開始後の最初の5カ月間で5000万人の新規加入者を記録したディズニー・プラスの偉業を認識している。ネットフリックスが同じ節目を迎えるまでに7年かかった。それでも、ヘイスティングスは次の目標に集中している。会員数2億人の突破と、そのさらに先である。それは世界各国のローカルコンテンツへの投資を増やすこと。年内にインドで最大4億ドルを投じる計画もある。これは人材の積極的な評価を続け、彼らに自ら判断を下せるような裁量権を与え続けることを意味する。

「現在のネットフリックスの企業文化が、会員に最高のサービスを提供する助けになるという自信が私にはあります。そして、HBOやディズニーよりも優れたサービスを提供する方法を見つけ出す助けになるという自信も」。そうヘイスティングスは話すと、最後に冗談っぽく加えた。

「彼らには、物事の進みを遅らせる社内プロセスがとてもたくさんありますから」


ネットフリックス◎1997年創業の米動画配信サービス企業。共同創業者はリード・ヘイスティングスとマーク・ランドルフ。当初は郵送DVDレンタル会社だったが、2007年からオンラインで動画配信を開始。「ハウス・オブ・カード 野望の階段」などの独自コンテンツを制作し、事業の幅を拡大。15年に日本へ進出しており、「全裸監督」などのヒット作を放っている。

文=ドーン・シミレスキー 写真=クワク・アルストン 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.078 2021年2月号(2020/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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