「演劇入門」からたどり着いたクラブハウスと飲み屋の共通点

かつて新宿にあった「ブライアンバー」


さきほどの分類をスナック街に置き換えてみる。強烈なママさんが、一方的に全員に話しかけるエンタメ性の高い店は「演説・講演パターン」。全員が身内のような、一見さんには敷居が高い店は「会話パターン」。そして、身内受けだけにならない輪を作ってくれて、みんなが居心地良い場所にしてくれるママさんがいる店は「対話パターン」。



このように飲み屋の種類は対話から会話のグラデーションで分かれていると考えても不思議ではない。「会話パターン」の典型である、キャバクラやホストクラブは、自分の名刺を捨てて何物でもない一人の人間として、お店の中にいる友達と会話をするところだ。気楽に、いつもの安心な内輪のノリを楽しめる。

そして、対話ができる飲み屋は、一人で行っても、ママさんが簡単に私のことを、周りの人に紹介してくれて、会話の輪の中に自然と入れるようにしてくれるようなお店。そこでは、新しい出会いが生まれる。最も重宝され、流行っているのは、このパターンのお店だ。

ただし、どれが良いということではないし、優劣があるわけでもない。我々が飲みたいと思ったとき、求めているものが、会話なのか、対話なのか、演説なのか、自然とそれを基準にして飲み屋を選んでいるだけのことだろう。


一昨年、惜しくも閉店した新宿のブライアンバー。ここは対話の店だった。3月に再オープンするが、どんな店になるのか楽しみだ

飲み屋の価値も上がるだろう


クラブハウスも、全く同じではないか。クラブハウスで皆が求めているのは、その時々で飲み屋に求めていたおしゃべりと同じなのではないか。もともと会話パターンの飲み屋を楽しんでいた人は、クラブハウスでも会話を求めるし、対話パターンの飲み屋が好きだったひとは、クラブハウスでも対話を大事にしているだろう。

クラブハウスの使い方と、通っていた飲み屋のタイプを考えてみることで、自分がどんなタイプのおしゃべりを求めているのかに気づかされる。これは、これまで飲み屋を一律でアルコール摂取のための場所とだけ思いこんでいた人にとっては、大きな発見なのではないだろうか?

その日のテンションにあった、心地よい人との関わり具合を選んで、クラブハウス(飲み屋)を使い分けることが出来れば、精神的安定を保つことが出来るのではないかと思う。

自分がどんなおしゃべりを求めているのか。クラブハウスでは、そのことに自覚的になることで、これからの飲み屋選びに対しても鋭敏になることができるはずだろう。クラブハウスで対話の腕を磨いた人々が対話パターンのお店にいったら、これまで以上に対話が盛り上がることも請け合いだ。

私はクラブハウスの価値が上がれば上がるほど、飲み屋の価値が上がると思っている。この状況がいつ終わりを告げるのかはわからない、終わりがこない可能性もある。しかし、この新興SNSを通じて、夜の街に対する恋しさを大切にしてもらいたい。

連載:「新:歌舞伎町論」
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文=手塚マキ

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