「演劇入門」からたどり着いたクラブハウスと飲み屋の共通点

かつて新宿にあった「ブライアンバー」


この2つにも需要はあるし、確かに面白い。しかし私が最も魅力的だと思うのは、3つ目の「対話パターン」だ。あるテーマについて、数人が集まって「対話」を行う。つまり、よく知らない間柄で、様々な情報交換や意見を交わすのだ。それだけでも有意義だが、さらにそこに集まってきたリスナーも参加させていくことによって、議論をより深まれば、もっと面白くなる。

とはいえ、『演劇入門』にはこうもある。

“(前略)一方『会話』(conversation)とは、すでに知り合っている者同士の楽しいお喋りのことである。家族、職場、学校での、いわゆる『日常会話』が、これにあたる。英語では厳然と区別される二つの単語が日本語では非常に曖昧な扱い方をされている” 

このように日本人には対話は難しい。だからこそ、円滑に対話を進め、議論を深めていくために必要なことは、モデレーターやファシリテーターのような司会を置くことだ。そうすれば、専門用語や身内の共通言語だけの言葉にならないよう調整したり、全員に話を振ったり、議論の軌道を修正したりすることができ、対話も成功するだろうし、誰でも聞きやすく、そして参加しやすくなるはずだ。


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例を挙げてみよう。ワイン好きが集まるルームで、モデレーターを中心に数人がワインについて語る。はじめのメンバーでおおよそ話題が出尽くしたところに、ふらりと現れたリスナーがさらに詳しい情報をくれたり、ワインには詳しくないが、類似した面白い情報を持つ人が発言したりすることで、新しい風が吹き込み、もっと盛り上がるのだ。

「盛り上がる」と言うのは簡単だが、うまくいくかどうかは、コントロールできるモデレーターの腕にかかっている。なぜなら、途中参加者のためにも定期的な状況整理や、既存のスピーカーを再度紹介する必要がある。場が整うことを考えると、そういったことが必要だからだ。

その結果、そこでは常に対話が繰り返されることになる。いずれ、うまく対話が繰り広げられる状況を整えてくれるモデレーター専門家も出てきそうだ。

3パターンを“飲み屋”に分類してみる


クラブハウスのあちこちで、このような「対話」が繰り広げられるようになったら、対話の能力を身につける修行の場になるし、活発な議論を繰り広げ、新しい知見を得らえれ、さらに新しい人とも出会えるという理想的なSNSになるはずだ。クラブハウスはこれを狙っているのではないか。

考えがここまで至ったときに、「これは単純に飲み屋の種類を、説明しただけではないだろうか」という思いが頭をよぎった。
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文=手塚マキ

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