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ニッポンのアイデンティティ


マクロな視点で「変人」を捉える


次に紹介したいのは、『出口版 学問のすすめ 「考える変人」が日本を救う!』(出口治明著)だ。この本は、ライフネット生命保険の創業者で、現在、立命館アジア太平洋大学の学長を務めている出口治明さんが書いている。

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出口治明著『出口版 学問のすすめ 「考える変人」が日本を救う!』(小学館)

ご自身の経験や各界を代表する5名との対談を通して、学ぶ力を失い「変人」が生まれにくくなった日本社会への危機感や、考える力を養うことで常識を疑う「変人」になることをすすめる内容となっている。

出口さんは、こどもの頃から本を非常に熱心に読むものの、学業成績はあまり良くなかったという。好きな分野では非常に好成績を残すが、総合評価となると芳しくない。だがこれは、「変人」が持つ重要な素質を表すエピソードだ。

この本によれば、「変人」の常識外れで奇想天外な発想というのは、その背景に頭の良さがあるという。だが、これはいわゆる偏差値主義的頭の良さではなく、自ら問いを立てる力や疑問を持つ力のことだろう。

出口さんは、この本の中で「数字・ファクト・ロジック」「エビデンス」に基づいて考える重要さを繰り返し述べており、この考え方に基づき、日本人の勤勉さや高学歴など人々が当たり前と考えていることが、果たして本当にそうなのかと繰り返し指摘している。

本を読みながら、私も何度も、これまで当然だと思っていたことを数字やエビデンスに基づき覆され、否が応でも常識を疑う姿勢をすり込まれていった。

また、この本は前述の『JTの変人採用』と比べると、変人としての思考方法や勉強方法のコツといった、一個人がどう成長することができるかという話もあるが、働き方改革や大学論、社会保障など日本社会が「変人」の活躍により発展するにはどうあるべきかというマクロな視野に立った話も多い。

また、人間の将来予測が悲観的すぎるという脳科学者の話や、宇宙の進化にはゆらぎが不可欠だったという宇宙物理学者の話など、アカデミックに「変人」の社会的意義を補強する対談も盛り込まれており、大変興味深い。

多様性を殺さず、「変人」がイノベーションを起こせるような土台や環境を整えることができる社会システムの設計を考えるにあたり、非常に勉強になるアイデアが詰まっている。行政など社会システムの設計に関わる方や、経営者など組織設計やマネジメントを行う方には特におすすめの本だ。

文=谷村一成

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