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ニューヨーク在住ジャーナリスト / NYC-based Journalist


──「Lesson 9」では、米国衰退論について書いていますね。コロナ禍が米国の問題をあぶり出したと。1月にはトランプ支持者による米議事堂乱入事件も起こりましたが、米国は復活できますか。

米国は問題を抱える一方で、ワクチン開発という大きな成功を収めた。科学やテックは米国の強みだ。バイデンが政治を変革できるかどうかについては、こう答えておこう。「米政治の構造を修復し、社会を癒やすには『適時適材』の大統領だ」と。熱心な国際主義者として、同盟関係構築に励むだろう。とはいえ、分断の根は深い。政治だけでなく、都会と地方、教育レベル、人種など、文化・階級の分断もある。バイデンは分断の克服に苦労するだろう。

──昨春以来、米国人の多くが身近な人の感染や死を経験してきました。この1年間、CNNの人気ホストとして、どのような思いで出演し、どのようなメッセージを視聴者に届けようとしてきましたか。

まず、米政府に対し、もっと効果的な対策を講じるよう訴えてきたつもりだ。米国のコロナ対策の不手際を指摘し、他国の成功例を報じることで、教訓を引き出そうと努めてきた。バイデンが「最初の100日間」の目標として発表した1日100万回のワクチン接種は「少なすぎる」と、ワシントン・ポスト紙の1月21日付コラムで指摘したところ、その数日後、彼は150万回の可能性に言及した。

一方、隔離を強いられ孤独に苦しむ高齢者や、老親と会えなくなって家族の絆を失った人が現状と折り合いをつけられるよう、精神的な支援も大切だ。

──「Lesson 10」では、コロナ失政は内政が原因であるにもかかわらず、現代人は冷笑的になってグローバル主義をたたき、自国の利益を優先しがちだと指摘しています。冷笑的になることなく、現実主義を貫くにはどうすべきでしょうか。

いまよりもっと困難な状況に思いをはせればいい。日本の場合は敗戦と原爆だろう。当時の人々は、その悲惨な出来事を無駄にすることなく、よりよい何かを生み出そうと、平和的かつ民主的で豊かな「工業大国」を築き上げた。つらいときこそ、大きな望みを抱き、理想主義に徹するべきだ。

私たちの生活はパンデミックで破壊されたが、それをチャンスに変えるべく、持続可能性のある社会を築くにはどうすべきかを考えるのだ。先進国が自国のためだけにワクチンを買いだめするのではなく、世界が一丸となって問題解決を目指すことが大切だ。

──10の教訓を未来に生かすために、いま私たちに最も必要なことは何ですか。

自分たちが人間の理解を超えた多くのリスクにさらされていることを認識すべきだ。

人間は都市などの開発を急いだため、地球温暖化による大規模な山火事など、自然の反撃を食らっている。

私が最も恐れているのは、このパンデミックが序章にすぎず、将来、人間が対応できないような、もっと大規模で衝撃的な出来事が起こるのではないかということだ。だから、これを警鐘ととらえ、もっと持続可能性のある未来を共に築こうではないか。


Fareed Zakaria◎CNNの報道番組「ファリード・ザカリアGPS」のホスト役、ワシントン・ポスト紙コラムニスト。2019年、フォーリン・ポリシー誌により「この10年における世界の思想家トップ10」に選出。ニューズウィーク誌国際版編集者、タイム誌コラムニストなどを歴任。

インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=山崎正夫

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