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ゼロイチの創り方を考える


World Matcha Inc.が、お茶の生産者と直接関係を持って碾茶を仕入れることは、これまでのお茶ビジネスの中では見られなかった構図だ。

日本のお茶の消費はペットボトル等の茶飲料が全体の3分の2を占めている。ペットボトル需要が上がってしまったことにより、急須で淹れる時に使う一番茶があまり飲まれなくなってきている。

品質の高い一番茶が売れなくなり、ペットボトル用原料として主に使われている二番茶、三番茶が買われるようになると、生産者の利益が全体としては減少する構造になってしまっている。塚田は「このままだと、茶農家さんは存続することが難しくなるという問題を抱えているため、その仕組みをもう少しサステナブルにしていかないといけない」と問題点を指摘する。

World Matcha Inc.を創業する前、塚田は新卒で入社した大手飲料メーカーで21年間働いていた。そのマーケットではバイヤーからプレッシャーを受けながら競合メーカーと熾烈な価格競争を繰り広げられる。小売や流通のバイヤーが常に強いこの業界では、価格を少しでも下げるため、小売りからメーカー、メーカーからサプライヤー、そして生産者へとコストダウンのしわ寄せがいってしまう。

生産者の苦しみに拍車をかけることになったとしても、メーカーの中にいると、コストダウンは仕事として評価されてしまう。塚田の役割も大企業の中では小さな歯車の一つに過ぎず、大企業のロジックの中でビジネスを回していくほかなかった。業界に長く身を置く中で「一歩引いて全体を見たときには、システムとしてしんどいのではないか」と思うようになったという。

はじまりは一軒のカフェ


塚田は、ペットボトルのお茶事業を拡大させていく傍らで、ペットボトルでは実現できない、お茶本来のフレッシュな味わいをお客さんに楽しんでもらうためにはどうしたらよいか考え始めた。

ペットボトルのお茶は、常温・長期間の賞味期限を確保するために、中身の熱殺菌を行っている。ただ、お茶は熱がかかると、フレッシュな香りやきれいな水色がなくなってしまう。様々な検討を重ねた結果、カフェで淹れたて・作りたてのお茶ドリンクを提供すれば、その味わいを実現できると考えた。

ときは2018年春。塚田がカフェをオープンした場所は、日本ではなく、米国サンフランシスコ。その頃現地では、ミレニアル世代を中心に、コーヒーのカフェインに疲れた人々が日常の中で抹茶を飲みはじめていた。彼らに向けて、抹茶ラテやスパークリング抹茶などの、カフェならではの「非殺菌」で、作りたての抹茶ドリンクを提供することにした。

文・写真=入澤諒

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