裁判は2016年にウーバーの元運転手たちが従業員の地位確認を求めて起こしたもので、最高裁は19日、原告側の主張を認める判決を下した。原告側が受けられる補償額は今後、雇用裁判所で決められる見通しだ。
モトリーフールの記事によると、ウーバー側は、訴訟の提起後にポリシーを大幅に変更しているため、判決はこの裁判の原告にしか適用されないとしている。
とはいえ、今回の判決は、ほかの元従業員が同種の訴訟を起こそうとした際に参照する判例になるのは確実だ。今後、そうした訴訟が続くとみたほうがよいだろう。
もっとも、今回の判決がウーバーに長期にわたって深刻な影響を及ぼすとは考えにくい。ライドシェアサービスはもはや生活に欠かせないものになっており、ウーバーはしばらくの間、市場で有利な立場にあり続けるだろう。
より重要なのは、この判決がギグエコノミー全体に大きな打撃を与えかねないことではないか。
ギグワークのような雇用関係のない勤務形態は、労働組合や左派の人からは蔑まれがちだが、多くの人(筆者を含む)に受け入れられている。こうした働き方は、労働時間などの柔軟な調整や、あえて言わせてもらえば、単一の雇用主の世話になることからの自由を求める人には合ったものなのだ。
英最高裁の判決が(大西洋の両岸で)政治家や活動家を勇気づけ、企業のために何らかの仕事をする人はすべて従業員とすべきだという声を強めることになるのは間違いない。憂慮すべき事態だが、それはたんに、ギグワーカーの圧倒的多数がギグワーカーであることを好んでいるからだけではない。
ギグエコノミーは今や米経済の約8〜9%、英国でも同程度の割合を占めるようになっている。英国の場合、これは昨年、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)によって失われた経済活動に匹敵する規模だ。
端的に言えば、米カリフォルニア州で制定されているような厳しい法律や、英国での今回の判決のような、企業側の活動を抑制するような司法判断によってギグエコノミーが消滅すれば、経済全体が大きな打撃を受けるだろうということだ。
その場合、投資家を含めて、すべての人が不利益を被ることは避けられない。